ちむこ転移
花札羅刹
第0話 プロローグ
佐藤 一郎。二十八歳、彼女無し。趣味はゲームとアニメと筋トレ。平日は営業マンとして街をかけずり回り、休日は独りぼっちの虚しさを打ち倒す為に筋トレに励む。そんな一郎は今、アパートの自室で横になっていた。ベッドの上で寝転がりながら、ノートPCに映った画面をスクロールする。画面に映っているのはアダルトなビデオ。今夜のオカズ探し、ということだ。気に入った動画を見るべきか、リスクを犯して新境地を探す旅に出るのか? どちらの選択肢も取れないまま、おすすめ動画の上で目を滑らせる。
結局新たな冒険をする勇気もなく、一郎はお気に入りの動画を再生する。そもそも新しいビデオを買うと、お金がかかるのだ。動画も安くはない。多少見飽きた感はあるが、節約と思えば我慢ができる。いつものように動画を再生し、チラリとベッドボードを見てティッシュがあることを確認する。大丈夫だ、ティッシュは十分に余っている。
明日はまた朝から仕事だなぁ……と現実を思い出す思考をどうにか追いやりながら、一郎は行為に集中する。ああ、もうそろそろ……と思ってティッシュに手を伸ばした時だった。突然自分が寝転がっていたベッドに円状の紋章が浮かび上がる。
「え、このベッドこんなLEDついてたっけ?」
それが一郎の、現世での最期の言葉となった。次の瞬間一郎の姿は消え、彼が取り出した一枚のティッシュだけが、ひらりと床に落ちた。
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一方、とある国では光り輝く紋章の前に膝まづく神官の姿があった。神官の男は杖を力強く握り、呪文を唱える。
「全能なる我が神よ、忠実なる僕たる我に力をお与え下さい。国の境を超え、世界の理を超え、次元の境界を超え、今ここに――ぶえぇっくしゅ!! あ、やべ、呪文の途中なのにくしゃみしちゃった」
床に描かれた紋章はより一層明るく輝き、周囲を眩い光で包み込む。しばらくすると光が徐々に弱くなり、紋章の中心に人影が見え始めた。
「やった! 召喚成功です!」
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