シンギュラリティコメディ

アーカーシャチャンネル

その世界は……

『コメディで飲むコーヒーは……』


 とあるバーチャル動画投稿者は別の動画投稿者の配信を見ている。内容としては「お笑い」について語るというものらしいが。


「寒いギャグでも、ある程度はバーチャル動画投稿者の設定で助けられている気配もする」


 その後も配信を見続けていたのだが、そこからお笑いを読み取ることはできなかった。テレビのバラエティー番組の劣化コピーなどでなかっただけ、まだ炎上などはしていないようであるが。


「SNS上でも炎上騒動は続くし、ネガティブ路線を何とかして消滅させないと」


 ふと考えるも、即興でお笑いコントなどに挑戦する配信などでは炎上が確実なため、色々な意味でもネタを探すことにする。



 ここ数日、SNS上では様々な暗いニュースが重なってネガティブがネガティブを呼ぶ状況が続いていた。それこそ、この状況こそがフィクションであるというような言及があるレベルで。


「タイムラインをミュートしても、どこかからネガティブな情報を仕入れると……」


 ネタを仕入れようとタイムラインを除くと、別の話題でネガティブなものが含まれているものも存在し、それこそ負の連鎖というべき状況になっていた。


「このままでは……?」


 タイムラインのとあるワードに目を付けた彼女は、ある方法を利用して何とか状況打開を考える。


「これは、使えるかも」


 ネットサーフィンで発見した物、それはWEB小説サイトだった。そして、アイディアを集めて執筆作業を開始する。



 その後、ネタを集めるためにもあの時に見たバーチャル動画配信者のお笑いを語る動画、その人物の設定を改めてチェックしていた。


「発展途上のAIを実装したバーチャルアイドル……?」


 単純に宇宙人や異星人であれば、何となく日本のコメディを勉強中と判断し、下手に炎上させれば営業妨害と認識されるだろう。


 しかし、設定を中途半端にするとそこをセキュリティホールと判断して叩きかねない。そんな状況が続いていた。


「AI、シンギュラリティ……そうか、そういう事か」


 彼女は、ふと自分の設定を見直してみることにする。下手に矛盾を突かれてしまえば、炎上は回避不可能だろう。



 数日後、彼女はコメディをテーマとして配信を行った。他の配信者のケースと違い、付け焼刃な知識を披露すれば炎上するのは確実なためか、あえてそこは触れていない。


『コメディだからと言って、下手にテレビのバラエティ番組の後追いなどに走る必要はないと思います。私は皆様に笑顔届けるバーチャルアイドルですから』


 下手に背を伸ばして下手な知識を披露して炎上するよりは、自分でもできるレベルで話題を提供する。それが彼女にとって最善の選択だった。



 実際の彼女はバーチャル配信者なのだが、その分野は動画配信などではなかった。WEB小説を投稿する小説家だったのである。


「しかし、小説の方は……?」


 閲覧数に関しては伸びが鈍い。それはわかっている。他の発表されている『お笑い』をテーマにした作品よりも内容は難しいからだ。


 それでもごく一部のサイトで話題になっているのは、予想外の出来事だったという。下手に万人向けにするよりも、様々な受け取り方ができる。


「コメディのテンプレとは違った作風に好感を持てる、か」


 彼女も、サイトで言及されているコメントには疑問を持つ。お笑いのグランプリを決めるトーナメントでも、去年の優勝したコンビのテンプレが同じように通じるとは思えない。


 それを踏まえたかのようなコメントだったが、それでも彼女はSNS上で炎上や『バズり』に悪用されなければ、そういうリアクションをされてもいいと考える。 


【繰り返されるテンプレよりも、わずかなオリジナルが予想外にバズる事もある】


 そう、サイトの感想はまとめられていた。悪意ある炎上で『バズる』ことは悲劇でしかない。


 それこそ、ネガティブを生み出すのだから。彼女は、ある意味でもコメディというテーマで『特異点』となるテーマを書いていたのである。


【AIはコメディの意味を知り、シンギュラリティに目覚めるか?】


 ある意味でもコメディとは大きく異なるものだが、注目されたのは間違いない。

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