宝魔奇譚
ネロ山桃李
第1話 淡い旅路の幕開け
プロローグ
『夢みがちな少年の決意』
ーーこの世の中一端の欲を持つのは悪い事だろうか?
王都に行って軍に入り、出世して武で名を大陸中に轟かせる。
相応の手腕があるなら商業でボロ儲けしてもいい。
勿論故郷の畑と家畜しかいない小さくて、のどかな村で家庭を築く程度の慎ましい成功を収めるのも悪いとは言わない。
ーーそれでも男に生まれたからには、一度は夢を見たい
そう、天から授かった一度きりの生。一回ぐらい淡くて純粋でそして身勝手な大言壮語なんかを語っても良いはずだ。
自分で言うのもあれだが15になる今まで村ではそれなりの良い子ちゃんでいたつもりだ。家族は大事にしてきたし、手伝いも欠かさなかった。反抗らしい反抗もした事がない。
勿論村の皆んなとの仲もずっと良好だった。
あまり気の進まなかった教会にも通ったし周りの言う事は何でも素直に受け入れてきた。
ーーだから、一度ぐらい外にでて好きな事をやってみてもバチは当たらない筈だ。
昔は悪しき魔物から国や人を救って尊く語り継がれる英雄になりたかったとか
未知の遺跡を仲間と探検してお宝を手にする冒険家や探求者になりたかっただとか、酒を煽りながらかつて抱いた夢を幼き自分に語ってくれた農夫達。当時目を輝かせながらいつまでも聴いていたかったが彼等は最後には決まって昔の話だの、世間知らずで若かっただので笑いながら打ち切った。
ーー自分は同じにはなりたくない..
不意に悪意なくそう思ってしまった。
自分の村ではどこまで行っても皆んな成人を迎えれば結局家を継いで作物を育てたり牛の世話をするのに落ち着く。
勿論彼等にもそれなりの苦悩と覚悟があって諦めた背景があったのかも知れない。
だけど自分は夢を夢で終わらせたくなかった。
叶わなくてもいい、やるだけやりたい。やらなくて後悔はしたくない。
だから遂に慣れ親しんだ村を出た。皆は然程止める気がないようだった。いや、むしろ見慣れた光景なのかも知れない。都で名を上げると意気込んだ若者が飛び出すなど良くある事なのだろう。そして結局半年とたたず戻ってくるのだから...
母は流石に止めようとしたが父は
「まあ、得するかは分からんが、損することもないだろう、一つの大きな経験だと思ってやってみろハハ..」
と激励と呆れが混ざったような口調で送り出してくれた。
ーーそれを認めた瞬間絶対一発名を上げるまで帰らないとヴァン・メーテルは誓った。
果たしてこの先どんな素晴らしい冒険が待っているのか..
無垢で不純のかけらもない、胸を躍らせながら偉大なる旅の第一歩を踏み出した!
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