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びっくりした。
せっかくだからと、チームメンバー全員で会長の家に呼ばれた。勝手に和風の大きな家を想像していたのだけれど、着いたのはタワーマンションの高層階だった。
「失礼します……」
栗田さん以外はおどおどしながら家に招かれた。予想通り会長の家は広く、高そうな調度品が並んでいる。
「お久しぶりでーす☆」
栗田さんは初めてではないようで、まったく自然体である。まあ、だいたい自然体な人だけど。
「やあ、よく来たね。妻も待っていたよ」
「あら、町子ちゃん、今日もお綺麗」
「奥様こそー☆」
二人は手を合わせて飛び跳ねている。
ちなみに奥様、素敵な着物姿だった。
「奥様、いつもお着物なんですか?」
「いやいや、今日はみんなが来るというので気合いを入れてね。君が着物を借りたいだんて言うから喜んじゃって。俺の弟子でも言わなかったから」
「そうなんですか」
陽気な奥様も含めて、僕らは和服選びをすることにした。何と会長は、二十着以上持っていた。
「さすがタイトル戦登場15回……」
「はっはっは。負けたときのを避けていたらこんなになってしまったよ」
「でも、意外と落ち着いた色のものが多いですね」
「俺が派手だと、二人で歩いた時に妻が目立たんだろう」
「なるほど」
僕には何がいいのかわからないので、会長夫婦と栗原さん中心に僕が切る和服が選ばれた。奥様が着付けをしてくれたが、「当日は町子ちゃんにお願いするといいわー」とのことだった。
「君たちはなかなか注目されているみたいだからね、和服を選んだのは良かったと思うよ」
「ありがとうございます」
まあ、メイド服になる危機もあったのだが。
「せっかく来たんだから、おいしいものを食べていきなさい」
会長はニコニコである。テーブルの上に、上品でおいしそうな食事が次々と運ばれてきた。
「すごい」
「福田さんは、今後これぐらいいいものをいっぱい食べるよ。タイトル戦に出るからね。もちろん棚橋さんも」
「私もですか?」
「俺の見込みによればね」
「あの、僕は?」
「なんとかフリークラスは抜けられるんじゃないかなあ」
「むう……」
どうもやはり、監督以外はすごいという、それすらネタになるチームネタ将であった。
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