2-6

 びっくりした。

 せっかくだからと、チームメンバー全員で会長の家に呼ばれた。勝手に和風の大きな家を想像していたのだけれど、着いたのはタワーマンションの高層階だった。

「失礼します……」

 栗田さん以外はおどおどしながら家に招かれた。予想通り会長の家は広く、高そうな調度品が並んでいる。

「お久しぶりでーす☆」

 栗田さんは初めてではないようで、まったく自然体である。まあ、だいたい自然体な人だけど。

「やあ、よく来たね。妻も待っていたよ」

「あら、町子ちゃん、今日もお綺麗」

「奥様こそー☆」

 二人は手を合わせて飛び跳ねている。

 ちなみに奥様、素敵な着物姿だった。

「奥様、いつもお着物なんですか?」

「いやいや、今日はみんなが来るというので気合いを入れてね。君が着物を借りたいだんて言うから喜んじゃって。俺の弟子でも言わなかったから」

「そうなんですか」

 陽気な奥様も含めて、僕らは和服選びをすることにした。何と会長は、二十着以上持っていた。

「さすがタイトル戦登場15回……」

「はっはっは。負けたときのを避けていたらこんなになってしまったよ」

「でも、意外と落ち着いた色のものが多いですね」

「俺が派手だと、二人で歩いた時に妻が目立たんだろう」

「なるほど」

 僕には何がいいのかわからないので、会長夫婦と栗原さん中心に僕が切る和服が選ばれた。奥様が着付けをしてくれたが、「当日は町子ちゃんにお願いするといいわー」とのことだった。

「君たちはなかなか注目されているみたいだからね、和服を選んだのは良かったと思うよ」

「ありがとうございます」

 まあ、メイド服になる危機もあったのだが。

「せっかく来たんだから、おいしいものを食べていきなさい」

 会長はニコニコである。テーブルの上に、上品でおいしそうな食事が次々と運ばれてきた。

「すごい」

「福田さんは、今後これぐらいいいものをいっぱい食べるよ。タイトル戦に出るからね。もちろん棚橋さんも」

「私もですか?」

「俺の見込みによればね」

「あの、僕は?」

「なんとかフリークラスは抜けられるんじゃないかなあ」

「むう……」

 どうもやはり、監督以外はすごいという、それすらネタになるチームネタ将であった。

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