1-5

 なんかこう、バズる気配は全く感じなかったが、撮影自体は楽しく進んでいた。三人三様の可愛さというのもよく出ている。

 最後のチェックポイントを越え、あとは帰るだけである。先頭は棚橋さん。僕は一番後ろである。

「段差があるので気を付けてください」

 そう言うと棚橋さんは、回り込みながらゆっくりと下っていく。

「よっ」

 だが、続く福田さんは一気に飛び降りようとした。着地して、そのまま立ち止まっている。

「どうしたの?」

 栗田さんが心配してのぞき込む。

「いえ、なんでも」

 そのようには見えなかった。

「足くじいたんじゃない?」

 福田さんの方に駆け寄る。右足を抑えている。

「棚橋さん、あと少しだよね」

「そうですね」

「じゃあ、僕がおんぶしていくよ」

「え゛」

「なんて声出すの」

「ちょっ、加島君、これ、動画撮ってるのよ」

「そんなこと言ったってここに置いていくわけにはいかないでしょ」

「荷物は私が持つね☆」

「すみません。ほら」

 僕がしゃがむと、福田さんはしぶしぶ背中に乗った。

「かるっ」

「余計なこと言わないで」

「じゃあ、行きましょうか」

「なんて情けない……」

 福田さんはへこんでいるが、動画的にはこういうアクシデントはおいしかったりする。出来上がりがどうなるか、楽しみである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る