輝いていると言われたい/お題:汚い夕日
いつかのあの日、俺は学校帰りの道を意気揚々と辿っていた。
遠くに見える美しい夕日を目指して、スポ根青春漫画の主人公にでもなったような気分で。
橙色に照らされるコンクリートを蹴って、ちょっとした段差に引っかかってすっ転びそうになって、それでも踏ん張ってまた走り出して。
夕日も、俺自身も、馬鹿みたいにきらきらと輝いていた。
そうだ、輝いていた。あの時は。
一年経った今じゃチームのスタメンからも外されて、スポーツ推薦の枠だって絶望的で、いよいよ一年坊になじられて。
どこかの家から香る魚の匂いにくすぐられながら、とぼとぼと寂しく辿るコンクリートは妙に薄暗く見えて、不意に何もないところで躓いて、立ち上がりたいとも思えなくて。
それでも知り合いに嗤われることだけは嫌で、俺はゆらりと立ち上がる。
瞬間、近くの家屋の窓が光を反射させて、俺の目を眩ませる。眩しい。眩しい。やめてくれ。
目を細めながら前を見れば、そこには夕日が堂々とした態度で黄昏の空に鎮座していた。
ああ、あの太陽は何も変わっていないはずなのに。
……もう、綺麗に見えないや。
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