田原総一朗、たまたま超能力をゲットする

DITinoue(上楽竜文)

田原総一朗、たまたま超能力をゲットする

 今日もテレビの収録を無事終えた。高齢に鞭打って、今日も議論してきましたよっと。僕の名前は田原総一朗。ジャーナリストだ。戦争を生き抜いて、テレビで大活躍中。まだまだ元気に活動中ですよ。


 今日もサッカーの練習を無事終えた。僕の名前は、俵原颯一郎っていうんだ。田原総一朗っていう芸能人がいるらしくて、同姓同名。すごくない?


突然だけど、僕は、サッカークラブに通ってる。でも、大会のたびにミスを連発して、ちっとも役に立たない、お荷物的存在。

学校の成績はいつもペケで、家族に叱られてばかり。姉は超優等生だってのにな。

それ以外のことでもみんな×××。だから、僕は決めたんだ。


異世界で不自由ない生活をする!!!!


 討論番組の撮影に向かう途中、僕、田原総一朗は奇妙なおっさんに出会った

「あなた、“たわらそういちろう”さんですね?」

「あ、はい」

こいつ、僕に討論を挑むつもりなのだろうか?

「何か御用でも??」

「御用でもって?あんた大丈夫です?」

く、失礼な。


「それじゃあ、今から超能力を授けます」

「は?」

番組なら、口の嵐を浴びせるところなのだろうが、調子が狂う。

「異世界へ行くときには、あなたにピッタリの超能力がないとダメなんです」

「へぇ。って、異世界なんてあると思ってるんですか?この世界は地球ですよ。あなたや私が立っているのも地球という世界ですよ。頭おかしいのではないですか?」


「いや、正常です。それより先に、今から超能力を授けますね」

そう言ってから、おっさんは何やら呪文を唱えて、僕の顔面にはぁという息を吐いた。で、とんでもねぇ口臭が・・・・・

「臭いですな」

「失礼な。ひとまず、これであなたに超能力が身につきました。数日後、異世界に案内します」

「え・・・・・・・?」

おっさんは、煙のようにふっと消えてしまった。


 おっちゃんは約束の日になっても現れない。僕が日付を間違えたのだろうか?

公園の植え込みも滑り台も、噴水もいつものままだ。何か変わったことも起きない。のんびり揺れるブランコに、僕は飛び乗った。


***

サッカーの練習が終わって、家に帰る途中、おっちゃんから声をかけられた。

「君は異世界に転生したいのではないかい??」

「え」

最初は混乱したが、その通りだと思った。この嫌なことしかない世の中から逃げ出したいと思ったからだ。

「はい!」

そして、元気よく返事を返した。

「そうかい、なら、私が言うことをよく聞くんだよ、君は中学生だから、たぶんわかるさ」

「はい」

「それじゃあ、異世界の転生の方法を教えよう」

そう言って、ずらずらと様々なことを教えられたが、僕の頭では理解することができなかった。ひとまず、分かったのは明後日の午後3時42分、近くの公園に来ることだった。

***


でも、結局は来ないじゃないか。何でだろう?同姓同名の人が、本人も気づかない区域で浮かんでいた。

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