ぶちかまし大笑い

エリー.ファー

ぶちかまし大笑い

 今から僕はあの男に体当たりをします。

 戻ってきたら笑顔で迎えてください。

 で、その後に結婚をしてください。

 いいですか。

 もう一度言いますよ。

 あそこにいる男、見えますね。

 はい、僕はあの男と面識は一切ありません。

 いいですか。

 今から僕は。

 え、なんですか。

 先に僕の話を聞いてください。

 はい、そうです。その通りです。僕はあなたとも初対面ですね。そうですね。

 でも、好きになるのに時間は関係ないですからね。

 お互いの気持ちがすべてですからね。

 だって新時代ですから。お見合いとか遅れてますもん。

 恋愛新時代ですからね。

 はい、では再度確認しますよ。

 あそこにいる知らない男、えぇと百八十センチ以上はありますから、きっと悪人でしょうね。

 今から、力いっぱい体当たりをしてきます。

 コーヒーを持っていますね。

 おもいっきりぶつかって、あのコーヒーをぶちまけさせてやりますよ。

 聞いてますか。

 僕が、コーヒーをぶちまけさせてやるって言ってるんです。

 並大抵の男にはできませんよ。

 男らしさをみせてやるって言ってるんです。

 どんなことがあっても、僕は自分の言ったことは曲げません。

 それが、男ってもんです。

 体当たりします。コーヒーが宙を舞います。地面に落ちます。コーヒーは力なく広がります。

 僕の勝ちです。

 コーヒーを持っているということは、僕に体当たりされる覚悟があるということなんです。

 男は、みんなそういう覚悟を持って外でコーヒーを飲むんです。

 僕もそうです。

 だから、僕は。

 体当たりをされたくないので、外でコーヒーを飲みません。

 あなたにお願いされても、僕は飲みません。

 コーヒーが余りにももったいない。

 じゃあ、お遊びはここまでです。

 そろそろ体当たりしちゃいますか。

 では、その前に筋を伸ばしますね。

 見ますか。見ますよね。

 僕が筋を伸ばすところ。

 どうです。動画とか撮りますか。僕は全然いいですよ。本当に気にしないタイプなんで。

 筋を伸ばすところを見られて、不快になるタイプの男もいますけど、僕はそっちじゃないんで。

 男らしさをはき違えちゃう男っていますからね。ああいうの困っちゃいますよね。

 いますよね、勘違いしてるキモい男。

 ああいう男って怖いですよね。

 さて、ぶちかましちゃいますか。体当たり祭りいっちゃいますか。

 ね、そろそろ見たいでしょ。

 ちょっとじらしすぎちゃったかな。見たいっていう気持ちを煽りすぎちゃったかな。ねぇ、ちょっと、ふふっ、ごめんなさいね。

 ここで見ててくださいね。

 男と男の勝負なんで。

 相手が気付いていない時に体当たりできるかが鍵なんです。

 じゃあ、静かにしててくださいね。

 あの男のいるところまで、八メートルくらいですかね。

 まぁ、良い距離ですよ。決して悪い距離じゃない。相手は警戒してないですしね。

 ここから二メートルくらいまでゆっくり近づいてそこから走り出して、思いっきり肩からぶつかってやりますよ。

 この作戦でいきますね。

 じゃあ、匍匐前進で近づくので他人のふりをしててください。

 何があっても僕のことを助けに来てはだめですよ。

 それが男の帰りを待つってことなんです。

 それじゃあ、行ってきますね。

 無事、戻ってこれたら。

 僕と結婚しましょう。

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