位置ずれ


「浜松の」


電話越しに老人はそんな事を言う。


「夕べ母ちゃんと寝たときに竹藪で虎と会ったのさ~♪」


とか。


「鴉?何故なくの鴉の勝手でしょ~♪」


などを歌う。酔っぱらいの戯言だ。


それをもっと聞きたかった気がする。


それから数年後、そこは浜松ではなかった。浜名湖の右側ではなく、左側だった。


やがて、不和が発生して、そこの市民プールでは忌々しい再会の可能性があった。


それがもう一つの真実オルタナティブファクトだった。


そこには恐るべき虎がいてしまった。


雌の鴉は鳴くことは無くなってしまった。

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