巨悪


死屍累々、南京大虐殺に血の海が出来た。


一般人さえも巻き込む壮絶な地獄の一丁目と言うに相応しい殺戮の京劇グランギニョルだ。


当然、報復心が発露して復讐も始まる。


それは梁山泊、『水滸伝』に登場する百八星の一覧。時勢におもねらず、梁山泊に身を隠した108人の剛の者を指す。


百八星、上位36星を天罡星三十六星てんこうせいさんじゅうろくせい地煞星七十二星ちさつせいしちじゅうにせい、下位72星をと呼ぶ。「煞」は「殺」の俗字、異体字である。天罡星は六壬の北斗七星を指し、地煞星は別の星占いの凶星を参考にしている。


百八星、百八人の復讐者達が南京に集う。


復讐は成功したかに思えた。


だが、一人の男がやって来てしまった。


放電する男は彼等の怨嗟の意味を悟らない、それはまさしくけだるげな闇であった。


「‥‥‥はぁ」


ため息一つ。


全滅・壊滅・殲滅の違い、全滅部隊の約3割戦闘兵の6割を喪失、部隊の約5割戦闘兵の10割を喪失、部隊の10割全部隊消滅を喪失、要するに殲滅、皆殺しにされた。


鏖殺、圧倒的に徹底的な蹂躙だった。


それもたった一人の男にやられた。


直後、一人の男が彼に語りかける。小さな公に望まれた男、小公望と仮称する。


「お前、何が楽しいんだ?」


「早く日本に帰ってだらけたい」


その歴戦の猛者はそう言って彼も殺した。


百八人と一人もまた常々争い事で起こるかなり世界的な基本理念の断末魔の呪詛、と彼へ言い終えた。

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