と人賢滅--とくに理由がないし人は賢すらあるが滅びて欲しい--

飛瀬川吉三郎

合縁奇縁、幸いではないかな。


「それで、終末に博多にね」


博多には屋台が沢山ある、それが屋台村とも言われ、博多名物である、新規参入の門を大きくして、外国人さえやっているところがある。


「思えば長かったなぁ」


彼と彼、くたびれたサラリーマンと何も苦労も知らないような平日に旅行に来た男。


こんなご時世、いやこんなご時世だからか。


「へぇ、起業に失敗したくちで?」


「というか元々没落していたんです」


「いつの話ですか」


「明治らしいです」


気の長い話だ、そんなのに拘るなんて若者の執着心を剥き出しにするなんて哀れである。


「ですから没落してたんです」


「それがなんですか?」


サラリーマンは今を生きてる俺とはまるで無関係だなぁと思っていた。


「ですからね、その元凶を教えて貰ったのです」


その男は酒を飲み干した。


そしてまた酒をついだ。


「誰に?」


「悪魔にです」


「ははーん」


毒電波や怪電波を受信した電波系キチガイか。


「それで?」


「とりあえず呪いました」


「気持ちは分からんでもない」


サラリーマンも長らくそれを続けてきたのだろう、それをしなくてはいけない理由も動機もない、というのは危険だ。


「まぁ他にも色々やりましたな」


「呪い以外に?」


混沌魔術ケイオスマジックですかね」


「それは随分と若者らしい」


混沌魔術ケイオスマジック、アレイスター・クロウリーが考案したとされる新しい時代、新しい魔術師の最先端の魔術だ。


「そしてエクトプラズマー」


「ふむ」


それはよくある話に見えた。


「天使が男性的で悪魔が女性的なのです」


「ほう」


「男性の女性的、女性の男性的とかね」


「ふむふむ、悪知恵が働いてましたな」


そうして、二人はそこで酒を飲み終えた。


「それで世界が滅びたらどうするのです?」


二人は歩きながら雑談をした。


「没落した事実が無くなるんですよ、それがあったから世界が滅んだようなものです」


「なるほど、つまり」


サラリーマンにはもう分かりきった事だ。


「金持ちに戻………ギャー!」


旅人はとりあえず殺された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る