夢焔〜血桜奇譚〜

みやぎ

第1話

 それは昔々の話。

 

 

 

 

 

 小さな山間の村に、不可思議な木と不可思議な泉があったと言う。

 

 

 紅く一年中散ることのない花は桜に似ていて、人はそれを血桜ちざくらと呼んだ。

 

 

 不可思議な泉は、澄んだ綺麗な水をこんこんと湧かせ、どれだけ雨が降らなくても、どれだけ日照りが続いても決して渇れることはなかったと。

 

 

 そしてそれらが、鬼と呼ばれる異形の者に守られている、と。

 

 

 

 

 

 鬼がそれらを守るのか。

 それらが鬼を守るのか。

 

 

 

 

 

 誰も正しく知る者は居なかった。

 

 

 

 

 

 ただその村には。

 

 

 不可思議な木と不可思議な泉があり、異形の者が在り、人は祈りと作物を捧げそれらを敬っていた。

 

 

 

 

 

 ………はずだった、と。

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