ゾンビもの(仮)
@MoreTabasco
プロローグ
「よっし、やっと完成したぞ」
見つめるパソコンの画面には、装甲が施されガンタレットが設置された大型のキャンピングカーが表示されていた。
草薙
趣味はゲーム、映画、アニメ、漫画、ミリタリーと節操ないオタクで、特にポストアポカリプスと称される、テーマが終末のモノを特に好んでいる。
明日が休日ということもあって、ビール片手に今ハマっているゾンビアポカリプスゲーをプレイしていた。
[デッド・エンド] というこのゲームは、大まかなストーリーはあるものの基本的にプレイヤーの自由に進めて遊べるシステムで、装備を集めるも良し、建築や車両作成をするも良し、ロールプレイ重視で旅をするも良しと時間泥棒なゲームとして人気を博した。
発売から3年程経った現在も、数多くのModを有志が制作してネットに上げている。
「いやー、デバッグモードで作ってたのに時間かかったな」
ゲーム自体も様々なModもほぼやり尽くしてしまって、ネタが尽きてきたかと感じていた最中、たまたまキャンピングカーの紹介動画が流れていたのを観てこれだ! と、ゲーム内で制作を思い立ったのである。
そんなこんなで、かれこれ合計15日も時間をかけて少しずつ作ったキャンピングカーは、いわゆるバスを改造する
外見は車両前面に障害物の破壊と除外用にドーザーブレード、窓には侵入と防護用に壊れない不思議超合金の格子を取り付け、屋根には超高効率の量子ソーラーパネルを設置し電力の安定供給をしている。
エンジンやジェネレーター、蓄電池もMod産であり不思議な出力に燃料もいらず、蓄電容量もとても大きい。
他にもビームを放つタレットに投光照明、車両を守るバリア発生装置なんかも付いている。
車両が破損しても勝手に治る
室内は一流高級ホテルの最上級の一室を
キッチンもトイレもシャワーも使いたい放題、付属の収納ボックスの容量制限もなく、食料も水も弾薬なんかのアイテムも電力も減らないし腐らないチート仕様。
それなら、要らない設備が一杯ではないかと思われるがそこはロマンだし制作上取り付けないと動かないのだ。
いやはやMod様々である。
「我ながら盛りに盛ったな。まあ、大人の移動出来る秘密基地みたいな感じでとても良き良き」
思わずニンマリしながらビールに口をつける。
「くぅー、美味い! 現実で
旅の相棒は
「さてと、セーブして寝ますかね」
次の日が休日とてやることはあるし、疲れもある。
完成したのなら早々に布団に入ろうと考えていたのもあり、ささっとセーブしてパソコンをスリープモードに移行しつつ、歯磨きして布団に包まれたのである。
「なのにそれがどうしてこうなってるの……?」
目を覚ませば見たことのない天井に、タヌキ顔の大型犬サイズの柴犬が、ベッドの脇で専用の寝床からお座りして尻尾を振ってこちらを見ている。
「とてもカワイイ! いや、そうじゃない。うちはペット不可の賃貸だったし、こんな良いベッドでもない」
頭が混乱してうまく考えがまとまらないが、ここから動くのも不安である。
「ん? いや、わかるぞ。何故かは知らないけれども記憶がある」
脳が活動したからか、映画のような記録が頭に入っている。ここがどこで、どういう状況なのかも把握出来た。
「寝る前の発言がフラグになるとかおかしいでしょ……? いや、確かに旅したいとは言ったけどさぁ……」
ゲームのプレイヤーキャラにキャンピングカーと相棒の柴犬で転移(転生も)である。
しかも、転移した世界はゾンビアポカリプスが起こっているパラレルワールドな現代日本のようだ。
「いやいやいや、どうすんのよこれ? チートっちゃチートだけれども、こんなの扱いきれる自信はないよ。あー、でも、命掛かってるしな。それはそれとして、ポチ。凄く良い毛並みしてるね。撫でてクソ気持ちいいのだけれど」
やはり、絶賛混乱しているらしい。飼い主? の様子がおかしいからか、心配して近くに来たポチを撫でくりまくり心の安寧を図っていく。
「あー、ホットミルク美味い」
どうにかこうにかベッドからリビングに移動し、冷蔵庫内から牛乳を取り出し、温めて飲んでやっと一息吐いた感じになった。
「さて、どうしようか? 今のところは危険がない場所にいるみたいだが……」
ソファーに座り、カップをテーブルに置きながら考える。
まず、身の安全は外に出ない限りは万全であろうと思われる。
このキャンピングカーは移動出来る要塞をコンセプトにしているので攻防共に問題はないし、例え外に出たとしても、プレイヤーキャラは|歴戦錬磨の完成されたステータスを持っている《きちんと反映されていればだが》。
「自分に関しては後々試すしかないか……、キャンピングカーの機能はひと通り大丈夫そうだし、何処か車両ごと隠れられる場所を探して移動するか。ポチ、おいで」
運転席に向かい、着席しエンジンやナビを起動。
「右ハンドルで作っててよかったぁ。あ、そういえば道路通れるかな? あれ、これはヤバいのでは?」
専用席が用意されていたポチが伏せながら首を傾げるが、優しく頭を撫でておく。
「まあ、どうにかなるでしょ。さあて行こうか!」
ナビを見ながらアクセルを踏んでいく。行き先は人もゾンビも少なそうで
行き当たりばったり? 確かに。
でも旅してみたかったのは本当のことで、計画もクソもないけどハンドルを握ったらとてもワクワクはしてきたんだ。
だから今、俺とポチの旅は始まったんだ。
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