第6話 強引過ぎる美少女上司

 先輩が階段から転げ落ちてから三日後、僕は先輩の病室の前に立っていた。


 スキャナーに手をかざすと、僕の生体反応が読み込まれた。


 ドアが真ん中から左右に、僕の肩幅分だけ開く。


 僕が通り過ぎると、すぐにドアは自動で閉まった。


 白い清潔感溢れる病室の中で、先輩は患者着姿でベッドの上で静かに……


「あーサク? 裁判の戦略は立った?」


 投影画面を四つ開いてエロ動画とアニメを見ながら同時にエロゲをプレイしていた。


 四つ目の画面には、なんだかいっぱい数字が並んでいて、収支とか純利益とか頭が痛くなりそうな単語も並んでいる。


「この会社はそろそろ無理ねぇ……全部売りよ。B社は、ふふん、これは水増しね、じきにこの社長の土下座シーンが見られるわ、いしし」


 この人の頭の中ってどうなっているんだろう?


「ほらサク。そんなところでぼけーっと欲情してないで早く見せるもの見せなさいよ、性的な意味で」

「ナニを見る気ですか!?」


 僕は恥ずかしくて、慌てて寮で股間を抑える。


「もぉ……ではこれが僕なり考えた計画です」


 僕は耳の裏につけているライフ・リンク・ギア、通称LLGに触れて投影画面を展開。

 計画書を別窓で表示すると、その窓をつかんでプリント用紙のように差し出した。

 先輩は僕から窓、意見書ウィンドウを受け取って目を通す。


「まず今回の至急物資。反粒子二〇〇〇ミリグラム。巨神甲冑用の空対空ミサイル二千発。量産型軍事甲冑アシガルの修理パーツ五〇機分。高機動型軍事甲冑センゴクの修理パーツ二〇機分です」


「そんなの百も承知よ、っで! あたしが聞きたいのはさぁ」


 先輩の右腕が僕のむなぐらをつかみ、強引に引き寄せられる。


「なんでウチの希望物資が全物資の三五パーセントなのよ!?」


 先輩は鬼の形相で僕に額を押しつける。

 至近距離で怒鳴られて、僕は怖くて泣きたい心境だ。


「でで、でも先輩。第四大隊は全部で五中隊あるんですよ? 五で割れば一中隊につき全体の二〇パーセントはもらえるはずです。それでも僕は第五中隊が戦闘を有利に運べるよう、欲張って倍近い割合の物資を」

「シャーラーップ!」


 頭をわしづかまれて、先輩の胸に叩きつけられた。


 うわああああああ!?


 患者着の胸元を大きく着崩した先輩の爆乳に僕の顔は埋もれてしまう。


 やわらかい。きもちい。今の先輩はブラジャーをしていないせいで、温かい生の感触が僕の顔全体を刺激する。


 先輩は僕の顔をはさみこんだまま、外側から胸を動かして、僕は先輩の胸で鼻と口を塞がれて息ができない。


「ぷはっ」


 なんとか双乳から脱出すると、先輩は僕の計画書ウィンドウを引き裂いた。

 一定以上の力をくわえられて、ウィンドウは光の粒子となって消えた。


「うちを他の木っ端中隊と一緒にしてんじゃないわよ! うちはね! いつだって最激戦地区の最前線に出されてんのよ! ミサイル一五〇〇発! 反粒子一五〇〇ミリグラム! アシガル三〇機センゴク一〇機! これ以上は飴玉一個まけられないわ!」


 先輩の両目が、紅蓮の炎に燃え上がる。


「でもそんなことしたら他の隊の人達が可愛そうじゃ」

「あんな他人の手柄を横取りすることしか考えていない連中に武器なんていらないのよぉおおおおおおおおおおお! うがああああああ!」

「先輩痛い! 頭を噛まないで!」


 先輩は僕の頭をつかむと、おにぎりのようにかぶりついてきた。


「解ったらとっととそれに見合ったアピール内容考えなさい! いーい! いかにうちがピンチかを説明しつつでもうちが無能に見えたら駄目だかんね! あくまでも敵が物凄く強大で打ち破るのに大量の物資が必要! そしてうちの隊の実力ならそれが可能! 初弁論ではそういう風にアピールするのよ!」

「はい!」


 頭を解放された僕は、軍人さんのように背筋をしゃきっと伸ばして反射的に敬礼した。


 いや、僕は軍属なんだけどね。


 第三師団第四大隊第五中隊兵站裁判交渉人第一補佐官鷺澤サク少尉、それが僕の肩書だ。


 少尉って言っても凄くは無い。


 元々部隊の補給物資獲得の交渉が任務の、交渉人っていう役職自体の地位が高くて、先輩は中隊長と同じ大尉だ。僕はその補佐官だから半ば自動的に少尉なだけ。


 同じようなので、例えば軍医さんは全員少尉以上だ。


 お給料の問題で、軍医さんは少尉以上にしないと民間のお医者さんよりも給料が安くなっちゃうから、軍医さんは自動的に少尉以上の階級を与えられるらしい。


「わかったらさっさと行きなさい! でないと抱き枕にしちゃうわよ!」


 セツキ先輩が掛け布団をがばりと開けた。

 だらしなく着た患者着から先輩の綺麗な、セクシーなふとももが丸見えだった。視線をふともものラインに沿って動かすと、先輩の下着が、


「すす、すぐに行ってきます!」


 耐えられなくなって、僕は病室から飛び出した。

   

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