第15話 世界について
「まずこの世界は地下にあります。古の文献によれば世界樹、『トルンクス』を中心に広がった世界で、世界は3つに分かれていて、樹上、幹、根の3つの世界になっています。そしてここは地面の中で世界樹『トルンクス』の幹の部分に当たります。つまり『樹上:地上』『幹:地下』『根:地底』の三層構造になってるわけですね。記録によればかつてはこの世界の遥か上方には「空」と呼ばれる果てしない空間が広がり、「星」と呼ばれる光源が無限にあったとか。現在も地上と呼ばれるところで暮らしている『樹上人』がいるとされています。」
――なるほど、この世界はごぼうってことね
――もっと別の例え方なかった?
『ジラフィムは樹上人などいないって言っていた。』
「ジラフィム将軍と面識があるのですね。私のことは他言無用にお願いしますね。確かに、皇国の軍部で樹上人がいると考えている人はいないでしょう。樹上人と言うのは我ら『洞人』の上位種とされています。皇帝陛下に崇拝を誓っている軍部の方たちは、皇帝の上位種がいると信じることは禁忌とされているようです。』
『『洞人』というのは?』
「『洞人』とは私達地下世界に住んでいる人間を指します。おおよそ1000年以上前からそう呼ばれているようです。少なくとも1000年以上、『樹上人』の存在は確認されておらず、地底から沸くモンスターと我ら『洞人』の存在、その他の動物たちの存在がこの世の生き物の全てです。」
カバリオは立ち上がり、背後にある戸棚から細かい溝の掘られた箱のような物体を持ってきた。
「樹上人がいると言われている理由が、落果遺物の存在です。本来この地下世界にしか人間が存在していないはずですが、時折天井から自然物とは思えない物体が落下してきます。
それを『落果遺物』と言います。」
カバリオは持ってきた箱の飛び出している部分を押し込むと、ヴォンッという音とともにその箱が変形し始め、工具箱を開けるような機構で開いていく。その箱の中心部分の内側から細長い棒状の物体が現れた。その物体は宙に浮きゆっくりと回転している。
カバリオはその棒状の物体を手に取り、机に立て斜めに線を引くようにスライドした。
すると引いた線が対角線となるような青く光る長方形が机の上に生成された。
そしてその長方形の上部にロケットのような3Dモデルが表示されている。
――このロケット……村の中心のクレーターにあったやつにそっくり。
カバリオはその3Dロケットに手を触れながら話始める。
「これは10数年前にこの村に落ちてきた落果遺物です。御覧の通りこの世界の文明を超越しているように思えます。私にはこれらが自然に出来たものだとは断じて思えません。」
『つまり樹上人がいて、その影響で落果遺物が落ちてきているということか?』
「はい、私は樹上人がいる。そう考えています。このことは他言無用でお願い致します。これはタラサのためでもあるのです。」
カバリオは再び立ち上がり壁に掛けられている肖像画を持ってきた。しかし、肖像画と言うにはあまりにもリアルで、まるで写真のように思える。そこには無精ひげを生やしたオールバックの聡明そうな男性と、その男性の方に手を置く小柄で華奢な女性の姿があった。
「オロルと私、そして妹のアイビスはこの村で育ちました。私達3人はいつも一緒で、村の周りに落ちてくる落果遺物を日々集め研究に没頭していたのです。」
――ここから過去回想。
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