第13話 VSディンゴ コヨーテ


 それから月日は流れて、仲春が過ぎ、晩春のある日。


「どぉおおおおおおおりゃあああああああああああああ!」


 俺の石槍が、コヨーテのどてっ腹をブチ抜いた。

 森のなかで、またひとつの獲物が俺の手に落ちる。

 勝利の雄叫びをあげる俺のうしろで、仲間たちが拍手をする。


「アギトのやつマジですげぇな」

「俺らとは槍の使い方が違うぞ」

「てか強過ぎだろ」


 そう言うのは、いずれも俺と同年代の連中だ。


 うちの集落には俺と同じ十三歳が俺を含めて三人。十四歳と十五歳が二人ずついる。


 今日は、というか、最近俺はこの七人で狩りへ行くようになっている。


 大人たちとの集団の狩りは、決して強制ではない。


 集団の狩りでの分け前を貰えなくなるかわりに、一人での狩りは認められている。


 それに、狩りを認められたばかりの血気盛んな若い連中だけでチームを組んで森に行くことじたいは、そう珍しくはない。


 俺らの親世代は、一時は若者だけのチームで森へ行っていたらしい。もっとも、すぐに無力さを痛感して、大人と一緒に狩りをしたほうが効率がいいと学んで、やめたらしいけれど。


 俺のチームは、俺を含めた四人が槍を、残りの三人は弓を獲物にして、獲物を背中に背負っている。槍使いは素早い動きが要求されるため、荷物持ちは弓使いの仕事にした。


「それにしてもアギト、お前ちょっと獲りすぎじゃないか?」


 弓使いのひとりが背を向ける。


「牡鹿だけじゃなくてジャッカルにコヨーテにディンゴって、これじゃ誰が捕食者がわかんねーっての」


 そうなのだ。俺ら人間はジャッカルやディンゴ同様、草食動物を狩る捕食者側だ。でも俺は、同じ捕食者であるディンゴやコヨーテまで狩ってしまう。


「でもさ、俺ら以外の捕食者が減ったら草食動物が増えて俺らの取り分が増えるかもしれねぇじゃん」

「まー、そういう考え方もできるか」

「だからさ」


 物陰から飛び出してきたディンゴを素早く槍で突き殺し、俺は笑顔を作る。


「相手が誰だろうと関係ねぇ! 狩って狩って! 狩りまくるぜ!」

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