第9話 美少女幼馴染

 ランプの明かりに気がつくと、目の前には好美が眠っていた。息を吞んで驚き、俺は自分がテントのなかで眠ってしまったことを知る。


 どうやら、だんだん眠くなってきて横になりながら好美と喋っているうちに、そのまま眠ってしまったようだ。


 それにしても……


「すげ……」


 あらためて見ると、やはり好美は可愛い。好美は一軍から好かれておらず、二軍扱いだけど、俺は一軍の女子たちよりも、好美のほうが可愛いと思っている。


 実際、男子たちのあいだでも好美は人気が高い。


 美少女が、俺の大好きなモンスレのコスプレをしている状態で寝ている。すごい光景だ。こんな美少女がすぐ横で寝ていると、それだけでなんだか悪いことをしている気分になってくる。


「……ん」


 好美がわずかに身じろぎをした。


 衣装を大きく押し上げる、メロン大の爆乳が形を変えて、その量感とやわらかさを誇示する。

 俺は好美の胸に釘付けになって、すぐに自分を叱咤する。


 可愛さもさることながら、好美はプロポーションもすごい。


 幼稚園の頃、好美は地味で内気で、目立たない子だった。その頃は毎日一緒に遊んだ。


 でも、小学生から中学生、そして高校生になるにしたがって、好美は年々魅力的になっていって、自然と女友達が増えていった。


 そして俺は、だんだん好美を避けるようになった。


 女子グループに男子の俺が混ざるわけにはいかない。というのもあるけれど、俺は単純に逃げたんだと思う。


 魅力的な好美と、劣等生の俺じゃあ釣り合わない。一緒にいて、好美が他の人から『なんで月森なんかと一緒にいるの?』と言われる前に、俺は自分から逃げたんだ。


 俺は冷静になると、好美に背を向けた。


 ゲーム世界に閉じ込められるなんていう緊急事態だけど、俺の考えは変わらない。


 いや、変えちゃいけない。


 俺にとって都合のいいハッピーエンドを考えてみる。


 レベル九〇の俺の活躍でみんなを守り続ける。するとみんなが俺を頼りにするようなって、俺はみんなの人気者になって、一軍もいままでのことを俺に謝る。


 そうしてラスボスを倒してゲームクリア。

 俺はみんなの英雄として感謝される。

 といったところか。


 で、それからどうなる?


 答えは単純明快。また元の鞘に戻る、だ。


 俺が感謝されるのはゲーム世界に閉じ込められるという異常事態での話。

 のど元過ぎれば熱さ忘れる。

 ゲーム世界から脱出して、平和な日常へ帰れば、みんな俺への感謝なんて忘れる。


 それどころか、俺が何も言わなくても責めて来るだろう。


 『月森、お前この前ちょっと活躍したからって調子のってんじゃねぇぞ』

 と。


 ならみんなを守るのをやめるか?

 いやだめだ。


 誰かが死ねば、現実世界に帰ってからもっと責められるだろう。

 レベル九〇のベテランプレイヤーがいながら死人が出た。月森はきっと日ごろの腹いせにわざと助けなかったんだ。


 あぁ、だめだなぁ、俺。


 ネガティブな想像しかできない。でもこれは勝手な妄想ではなく、十中八九現実になることだろう。


 ゲーム世界に閉じ込められるっていう状況はまるでラノベやアニメのようだ。けど登場人物、人間はキャラクターじゃない。


 リアルの人間は、助けられたからって手の平を返すほどチョロくない。


 たいていの人はどんなに助けてあげても、尽くしてあげも、それを当然とばかりにふんぞり返って、むしろさらに要求はエスカレートする。


 溜息をついて、俺は冷静に最適解を導き出した。


 このままリーダーは服部に任せて、服部のサポートをしながら手柄は服部に渡して、俺は陰に徹しながらみんなを守る。


 ひとりの死者も出さないから、俺が非難されることはない。


 手柄、今回の事件解決の立役者は服部にするから、俺が調子にのっているとか責められることもない。


 朝になったらその辺の話を服部に……


「あれ?」


 そういえば妙だ。

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