第7話 言葉巧みに保身に走る一軍たち

 その日の夕方。


 一日中森のなかを歩きまわった俺らは、暗くなる前に野営をすることにした。


 野営に必要なテントは、初期装備にも入っている。


 森のなかでも比較的開けた、空き地のような場所でテントを張る。と言っても、アイテムとしてテントを使用すれば、テントは勝手に組みたてられた状態で現れる。


 そしてアイテムのなからから、携帯食糧を取り出して食べる。


 モンスレでは満腹値というものが存在しており、これがゼロになるとHPが減りはじめる。実際に空腹感も湧くので、食糧は必須だ。


 俺に向かって野次が飛んだのは、そうやってみんなで食事をしているときだった。


「おい月森! 一日中歩いても森から出られないってどういうことだよ!」


 岡田。不良と呼んで差し支えないグループの男子に言われて、俺は申し訳なさそうに眉根を寄せた。


「ごめん。でも森のマップが広すぎるんだよ。基本的な構造は変わらないけど、俺が知っているマップをそのまま何倍にもしたような感じだ。それに、レッドエリアを避けているから、凄い遠回りなんだ」

「レッドエリアだぁ?」


 眉間にしわよせて睨んでくる男子たちに、俺は怯えないよう耐えながら説明する。


「強いモンスターが出現する危険エリアだよ。モンスレには同じマップでも弱い敵が多くでるグリーンエリアと、強い敵が多くでるレッドエリアにわかれているんだ」


 すると、不良グループ五人のリーダー、柴田が身を乗り出してくる。


「おい月森。つうことはレッドエリアの敵を倒せば経験値がたくさん手に入ってレベルも上がりやすいのか?」

「んと、そうだけど、みんなはレベル一だし危険だよ」


 柴田の子分の、山本も身を乗り出してきた。


「強いって言っても、マップがマップだし、そんな極端に強くはねぇんだろ?」

「そうだね。ここベリーの森だと、グリーンエリアの敵はレベル一から五ぐらいで、レッドエリアは十一から十五くらいかな」

「それって最強装備でも勝てないような強さなのか?」

「いや、みんなにあげた武器なら倒せなくはないと思う。けど思いがけず敵の連続攻撃を喰らったり隊列から孤立しちゃったり、回復し損ねたらさ。とにかくもしもってことがあるだろ?」

「ふ~ん」


 リーダーの柴田が納得すると、子分たちも何も言わなくなった。


 それから、柴田率いる不良五人組は、自分らのステータス画面を眺めながら、ひそひそ話をはじめている。

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ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。

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