ボッチがハマっていたゲーム世界にクラス転移
鏡銀鉢
第1話 俺の愛したゲーム世界
不平等だ。
この世は不平等だ。
この世の中は不平等にできている。
世間知らずの大人たちは子供らに努力の大切を説くが、努力に意味はない。
生まれながらに才能や容姿に恵まれた人や、お金持ちの家に生まれた人。
彼ら彼女らが何の努力をしたというのか?
努力する凡才は怠け者の天才に負けるし、貧乏人がどれほど努力を重ねても金持ちよりも優遇されることはない。容姿に至っては、整形でもしなければ変えようがない。
だから俺は、この世界が好きだ。
一陣の風に乗って俺を包み込む草の香りが鼻腔を満たして、俺は大きく息を吐いた。
丘の上に立つ俺の眼下に広がるのは、どこまでも続く草原と、その草原に生息する獣型のモンスターたちだ。
ヴァーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイ・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム。VRMMORPG。通称、VMR。
VMRとは、プレイヤーの意識をゲームの世界にダイブさせ、文字通りのアナザーワールドで冒険を楽しめる種類のゲームだ。
昔はラノベやアニメにありがちな設定だったけど、いまではテレビゲームが廃れ、こっちが主流だ。
ゲームと言えばテレビゲームでもボードゲームでもなく、ゲーム世界に意識をダイブさせるタイプのものを指す。
そして、ゲームであるが故に、この世界に不平等はない。
俺は背中の剣を引き抜くと、刀身に自身の顔を映した。
容姿はキャラメイクで自由自在。この世界では、俺は勇者然として精悍な顔立ちでしかも長身の、カッコイイ男なのだ。
もちろん家柄や才能なんて関係無い。課金システムはあるけれど、無課金だって根気強くモンスターを倒していればお金もレベルも稼ぎ放題だ。
だから俺は、この世界が好きだ。
平等で、根気さえあれば、努力すれば誰でも強くなれるこの世界が大好きなんだ。
「さてと、今日もやるぜぇ、モンスター討伐!」
俺は剣を手に草原を疾走。一薙ぎの疾風となり剣を振るった。
俺が愛するこのゲームの名は『モンスタースレイヤー』。とてもマイナーなゲームだ。
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