第28話 地球には帰れません
「それに昨日からみんなの話を聞いていたら、今までの人ってエデンに骨をうずめているみたいだし」
いつのまにいたんだろう。僕の専属メイドの一人、ロップウサギのキャロが興奮気味に口を挟んで来た。
「はい。ニンゲン様には死ぬまでに一人でも多くの民とお子を作って頂かなければなりません! 早速今夜から稽古を」
「無理よ無理」
次に口を挟んだのはティアだった。
「アタシ、昨晩夜這いしたんだけどね」
食堂にいた全員の視線が、一気にティアに集中した。
僕は噴き出しそうになって、なんとか押さえた。
「でも駄目だったわ。ニンゲン様は好きな女の子しか抱かない主義なの。だからまずは」
ティアは席から立つと、僕の肩に寄り添ってくる。
「ニンゲン様と親密にならないとねぇ。ニンゲン様ぁ、はい、あーんしてぇ」
ティアがフォークでカットステーキを一切れ刺して、僕の口に運んでくれる。
「あむ、もぐもぐ」
咄嗟の判断ができなくて、僕はされるがままに食べてしまう。
「ねぇニンゲン様ぁ、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
「じゃあアタシにも食べさせてね♪」
ティアは人懐っこい笑みで、ピンク色のくちびるを開けた。まるでキスを待つように目は閉じられて、僕はドキドキしてしまう。
僕はカットステーキを一切れフォークに刺してから、ティアの口に運ぶ。でもその手つきはぎこちない。
この年で、あーん、なんて、これじゃまるで恋人だよ。
あらためて見ると、ティアはやっぱり凄い美少女だ。
いや、レオナ、ネイア、ティア。この三人は三人ともが、とっても魅力的な女の子だ。
三人とも驚くぐらい綺麗な太陽色の髪で、金色の瞳は宝石みたいに輝いている。
背は中背で、男子の中では別に長身というわけではない僕が気後れすることもない。
あとプロポーションは……かなり抜群過ぎる。長い手足はバランスが取れていてモデルさんみたいだし、キュッとくびれたウエストや、スカートの上からでもわかる大きくて引き締まったヒップライン。
それに、鎧でも着ない限り隠せそうにない、発育の良い豊かな胸。ライガーだからか、ネイアの方が少しだけ背が高くて、明らかに胸がおっきい。ウマ族であるエマの爆乳には負けるけど、エマに迫るモノがある。
ちなみにライガーの体の大きさはライオンの四割増しで、体重は倍以上にもなる。
顔立ちや雰囲気は、
レオナは少し幼さのある可愛いお姫様系。
ティアは自信と余裕に溢れたお嬢様系。
ネイアは凛とした気高い少女騎士系。
といった感じだ。
ティアが、僕のフォークからカットステーキを口に含んだ。
「ふふ、おいしい」
ティアの笑顔に胸が高鳴ると、エマが僕に告げた。
「ちなみにですが、歴代のニンゲン様は一部の人々を妻にしております。日中は希望者の女性達との子作りに励み、夜は妻の中から相手を選んでいたようです」
「どこの独裁者だよそれ!」
僕は慌てて怒鳴ったけど、エマは涼しい顔だ。
「そう言われましても、ニンゲン様にはそういう生活をしていただきませんと、エデンの人々は絶滅します。息子を作れるのは貴方だけなのですから」
言われて、僕は黙ってしまった。
そりゃ、頭で考えれば理解はできる。
死ぬまでエデンにいるということは多かれ少なかれ、僕はハーレムの主になって、毎日みんなと……
頭から湯気が出そうになったので、僕は話題を変える、いや戻した。
「それで帰れないって話だけど、今まで召喚された人間で地球に帰った人っているの?」
キリン族のレキシーさんが、くいっとメガネの位置を直す。
「いませんね。記録の上では、歴史上地球に帰ったニンゲンは確認されておりません。やはり、帰りたいですか?」
最後の方には、僅かな申し訳なさが感じられた。
レキシーさんには『自分達の都合で呼び出された犠牲者なのでは?』という思いがあるのかもしれない。
「……」
僕は思い出す。親と一緒に暮らしたあの家……は、もう誰もいないわけで。
毎日通った通学路、そして学校……ではいじめられていたし友達もいない。
マンガやゲームとかの娯楽品……そこまで熱中するようなものはなかったな。
あれ?
「いや、なんか全然帰りたいって気持ちが湧いてこないや」
レオナが恐る恐る、僕に尋ねる。
「本当ですかニンゲン様? もしも私達に気を使っているなら」
僕はあごに手を当てて、結構真面目に考える。
「いや、僕って地球だと天涯孤独だったし友達もいないんだよね。そもそも僕にとって地球ってそんなに居心地のいい場所じゃなかったし」
そんな僕だからこそ、神様は召喚したのかもしれない。
「でも故郷を離れたら郷愁の思いに狩られたり」
「いや……うーん……毎日寂しく暮らしていたしなぁ」
「それならニンゲン様❤」
うしろから、僕の専属メイドの一人であるフレミッシュウサギのニーナが後頭部に抱きついて来た。頭がおおきなおっぱいに包まれてきもちい。
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