第9話 カルチャーショック?

「リアル系か」


 先程ドリルやロケットパンチは無いのか聞いてセイルに笑われた事からスーパー系の説明はしたがセイル曰く「そんなの実践で役に立つわけねーだろ」との事。


「やれやれ、随分な戦力を持っているようだがよく恥ずかしくも無くそんな物に乗れるな、お前の世界の連中は自身を鍛えようとは思わないのか?」


 アクション世界の住人である竜輝の問いにSF世界の住人セイルはちょっと機嫌を悪くする。


『オレ様の世界も凛一の世界と同じで人間がいくら鍛えたところで岩も持ち上がらねーしシマウマにだってケンカで勝てねーよ』

「それが俺にはまだ信じられんよ」


 一見するとかなり嫌味な事を言っているが無理も無い。


 話に聞けば竜輝の世界の人は鍛えれば猛獣より強く鋼より堅く風より速く、武術家こそが世界最強の生物にして究極の存在らしく竜輝が鎧を着ていないのは鎧よりも竜輝自身の皮膚のほうが丈夫だかららしい。


 だが竜輝の腕を触ってもその感触は柔らかくて硬さなどあるはずも無く、凛一はなぜ刃が通らないのか理解できなかった。


「あたしの世界なら別に体鍛えなくても魔術があるけど、あんたら全員魔力ゼロだもんね」


 さすが天使、見ただけでその人に魔力があるか分かるらしい。


 ズシン


「うおっと! セイル、踏み潰さないよう気をつけろよ!」

『悪い悪い』

「ったく、モンスターとエンカウントする前に仲間に踏み潰されて死んだら笑い話にもならないっての」

「エンカウント?」


 聞き慣れない単語に先頭を歩くエリスが振り向いた。


「ああ、モンスターと遭遇することだよ、そういえばこの森のエンカウント率、モンスターと遭遇する可能性ってどれくらいなんだ?」

「低いけど遭遇したら最悪ね」


 凛一の肩がピクッと揺れる。


「そ、そんなに強いのか?」

「並の勇者パーティーなら全滅よ、量より質、この森に住んでるモンスターはどれも一個中隊が総出で戦っても勝てないわ」

「もしかしてオレ達スーパーピンチ?」

「いや、あたしならここの連中が束になっても勝てるわよ」

「強!!?」


 凛一は思わず声を張り上げてしまう。


 並の勇者パーティーのレベルは分からないがおそらくこの森のモンスターは全てボス級でRPGで言うところの最終ダンジョン付近だろうがソレを束で倒せるとなるとエリスのレベルは魔王城突入可能レベルといったところだろうか。


「あたし天使ですから、まあ心配しなくてもあんたら民間人はこの勇者で天使のエリス様が街まで守ってあげるからこの勇者天使様に任せなさい」


 自信たっぷりにただでさえ立派な胸を張ってエリスは鼻息を荒げる。

 竜輝に翼を褒められた時にも思ったが本当に乗せやすい娘だと凛一は感じた。


「待て」


 凛一とエリスの会話を切るように竜輝が前に進み出てエリスを制する。


「前方から強い気の流れを感じる」

「あたしも強い魔力を感じるわ、この強さ、まさかダークドラゴン? いや森のヌシかも」

『バトルは大歓迎だぜぇ』


 駆動音を鳴らしながら三人の背後でアークが電磁投射機関砲(レールマシンガン)を構える。


 ドラゴンがどれほど巨大か知らないが背後に一〇メートルの巨大ロボットが控えていると思うと一介の学生の凛一でも怖く無い、それどころか本物のモンスターを見られると、男の子の憧れである巨大ロボット・アークを見た時のような興奮すら感じる。



 ガサガサ っと音を立ててついに勇者パーティーはエンカウントした。



「う~ん、魔王さま見つかりませんね~」

「やっぱり背中を流すのを大義名分にボクが魔王様とお風呂に入っていれば」

「それよりアタシが脱衣場で魔王様の洗濯物にハァハァせずお風呂場に突入していれば」

「後悔しても始まらないわ、それよりも今は一刻も早く私達の愛しの幼女魔王(プリティ・デビル)を見つ――」

「…………」


 木々から出てきた四人の美少女達がエリスと目が合い、五人の時間が止まった。


 どんなモンスターが出てくるかと思えば現れたのは小柄なツインテール美少女と左サイドテールの巨乳ボクっ娘、それに右サイドテールのスレンダー美少女とポニーテールの長身爆乳美少女の四人だった。


「おいおい二人とも、こいつらのどこが森のヌシなんだよ、全員尖った耳がチャームポイントの美少女じゃないか……あれ?」


 耳が尖っている……ということは……


「「「「勇者だぁあああああああああああああああああ!!!!」」」」

「四天王だぁああああああああああああああああああ!!!」

「ヴォルケーノウエーブ!!」


 四人の一人、真っ赤な髪とドレスが印象的なポニテ美少女が進み出て地面に向かって右手を一線すると地面からマグマの壁が噴き上がりエリス達に襲い掛かる。


「凛一!」


 数千度のマグマは触れなくても強烈な熱風を凛一に浴びせるが竜輝は凛一を抱き上げ一瞬でアークの背後にまで周り、正面ではエリスが冷却呪文を集中させることで被害を防いでいた。


「なんとか……間に合ったわね……」

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