第7話 異種ジャンルパーティー

「それとこれからの事なんだけどさ、とりあえずオレら一緒にいたほうがいいんじゃないか?」


「一緒に? 悪いがここが大和でないと分かった以上、俺は自分の国を探さなくてはならんのでな、これで失礼する」


「場所知ってるのか?」


 凛一に背を向けて竜輝は歩き始めるがすぐに足が止まってしまう。


「世界の土地の広さはお前の国の一〇〇倍以上だぞ、しかも最低でも四つの世界が混ざってるんだ。


 今世界の地理がどうなっているのか詳しい事はまだ分からないけど最大で広さは大和の四〇〇倍、大和国がこの世界のどこにどう飛ばされたかも分からないのに歩いて探す気か?」


「そ、それはだな……」


 狼狽する竜輝に凛一は一気に畳み掛ける。


「エリス、魔術で探し物ってできるか?」


「できるわよ、お城の魔術協会本部に行けば竜輝だけじゃなくてみんなの家族や国も多分見つかるわ、でも地理関係がそのままでもこの森からしばらく歩くからあたしの案内が必要だし魔術協会の会長に頼むにもあたしの顔が必要よ」


「らしいぞ、オレ的にもやっぱりそれぞれの世界の事情を知っている奴がいないと何かと困るし都合よく別の世界の連中がこうして会えたんだから一緒にいたほうが便利だろ?」

「……わ、解った、しばらくお前らに付き合うとしよう、うむ」


 振り向いた竜輝の顔は口角が痙攣しかなり気まずそうに見えた。

 どうやら国を探す方法はまったく考えて無かったらしい。


「オレ様も全然オーケーだぜ」


 頭上からの声に三人が見上げる。

 声がしないと思ったらセイルはアークの操縦室に戻っていたらしく顔だけ出してこちらを見ている。


「今隊長と連絡取ったんだけど全員無事っぽいし今の状況説明したらお前らと一緒に行動してこの世界の情報集めろってさ」


「よっし! じゃあさっさとエリスの街に行こうぜ、早くうちの妹見つけないとあいつなら寂しさ紛らわせる為に人の二、三人は殺しかねないからな」


「ちょっ、サラッと怖い事言うなよ、お前の妹怖過ぎだろ」


 冷や汗を流すセイルの様子に凛一は笑い、そして次の瞬間、凛一の耳が物音を捉える。


 何の音かは分からないが義理の妹の桜は世界が融合する直前まで一緒にいた。


 なら近い場所に飛ばされた可能性が高いと考える。


 ちなみに凛一が聞いた音は、

 

 

 水音と……布擦れの音だった。



「桜ぁああああああああああああ!!」


 森の中に飛び込み一瞬で凛一は遥か彼方へと消えた。


 一般人など及びもつかない超常の聴力を持つエリスと竜輝ですら気付かない音に、だが桜崎凛一の耳は敏感に反応した。


 音に反応、いや、それ以上に彼の本能がこちら行くよう告げていた。


 理屈ではない、ただそうしなければならない気がして、そうせざるを得なくて、凛一の魂がその方角を求めたのだ。


 そしてこういう時は森の中の綺麗な湖に辿りつき、そこには体を洗う全裸の美少女が必ずいるのである。




 桜崎凛一の四八の主人公補正(スキル)

 エロハプニング体質:凛一はこの世界で起こりうるありとあらゆるエロハプニングに立ち合い、自身もエロハプニングを起こしてしまうのだ。



「あ…………」

「えっ…………?」


 綺麗な湖のすぐ横に立つ全裸の美少女と目が合った。


 彼女の足元には折りたたまれた服がある。


 凛一より頭一つ分以上に小さな体、ペタンコの胸に可愛いおへそ、さらにその下は……


「イヤャァアアアアアアアアアアアアア!!」


 少女が両手で恥かしい場所を隠して凛一が叫ぶ。


「すいませんでしたぁああああああああ!!」


 ジャンピング土下座で凛一は自身の額を地面に打ち付けた。


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人類を護る盾であり、特異な能力の使用を国家から許可されているシーカー。

その養成学校への入学を懸けて、草薙大和は幼なじみの天才少女、御雷蕾愛との入学試験決勝戦に臨んでいた。しかし結果は敗北。試験は不合格となってしまう。


そんな大和の前に、かつて大和の命を救ってくれたシーカーの息子、浮雲真白が現れる。傷心の大和に、大事なのは才能でも努力でもなく、熱意と環境であり、やる気だけ持って学園に来ないかと誘ってくれたのだった。念願叶って入学を果たした大和だが、真白のクラスは変人ばかり集められ、大和を入学させたのにも、何か目的があるのではと疑われ──。


ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。

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