第2話 ハーレム系ラブコメ主人公 桜崎凛一


「ここどこだよ!?」


 愛笑(あいしょう)学園(がくえん)高等部二年、桜崎凛一(さくらざきりんいち)は空を仰ぎ見た。


 いつも通り学校が終わって家に帰る途中に気付けば森の中、そんな急転直下な展開を誰が認めるだろうか。


 いや、認めるしかないのだが、だがここは確かに森である。


 つい先ほどまでいた町よりも気温が低く、森特有の濃い緑の匂いに木に太陽光を遮られたうす暗いこの場所は誰がどう見ても森である。樹海と言ってもよいかもしれない。


「何この展開!? なんでオレ森にいるの!? ていうかオレの近所に森なんかあったか!? これからどうなんの!? まさか女体化した三国武将がモリモリ出てきたり『貴方は実は次期魔王なのです』とか言われて魔王になったりそういう展開!? 昨日録画した深夜アニメまだ見てねーぞコノヤロウ!!」


 激しく混乱している。

 というか彼がバカなだけかもしれない。

 中肉中背で特に特徴の無い日本の男子学生凛一は混乱する記憶を整理すべく頭を抱えて今日あった事を朝から順を追って口にした。


「えーっと今日は確か隣に住んでる幼馴染の鈴華(りんか)に起こされてキッチンに行ったら一年中海外で仕事している両親に代わって義理の妹(実際は従妹(いとこ)で結婚可能)の桜が朝ご飯作ってくれていて三人で学校に行く途中の曲がり角で食パン加えた女子とぶつかってその時そいつのパンツ見ちゃってそいつに怒鳴られて学校に着いたらその女子が転校生でみんなの前でオレの事をパンツ覗き魔扱いしてきてお昼は誤解を解く意味も込めて妹の桜と幼馴染の鈴華とその転校生と一緒に屋上で昼飯食べて放課後は生徒会室に行ったら学園のアイドル生徒会長が着替え中でだけどすぐ謝ったおかげか何故か怒られないどころかちょっと嬉しそうに注意されて、帰ろうと下駄箱に行ったら下駄箱に手紙が入っていて学校裏の伝説の桜の木の下に呼び出されてそれで行ったら後輩の女子がいてだけどその女子が会うなり顔赤くしてどっかに逃げちゃって仕方なく妹の桜と幼馴染の鈴華と合流して一緒に帰ってって……ここまではいつも通りだよな。

あとは家の前に着いて鈴華と別れたら急に地震が起こって……そうだ! 桜と鈴華はどこだ!?」



 可愛い妹と乱暴な幼馴染の存在を思い出して辺りを見渡すが自分の学生カバンと体育カバンが一つずつあるだけだった。


 教科書の全てを学校に置きっぱなしの凛一が二つのカバンを開けると学生カバンの中には漫画と雑誌とゲームとノートパソコンその他多数、体育カバンの中にはTシャツと短パンに上下のジャージとその他多数。


「とりあえず荷物は全部あるみたいだけど、ここはどこだよ、とりあえずあの二人探さないとな、でも地震て事はまさか日本沈没か?」


 二つのカバンを両肩にそれぞれひっかけて凛一は歩き出す。

 だが桜と凛華を探していると何か強い違和感を感じる。


「これ、なんの木だ?」


 凛一は特別植物に詳しいわけではないが、森に生えている木や植物はどれも見た事の無い物ばかりで日本のソレとは雰囲気が違う。


 異国の地

 そんな言葉が頭をよぎって否定するが頭上に実る木の実や足元に生えるキノコがその可能性を高める。


「アレもコレも店で売ってねえよな? まあキャベツとレタスの区別もできない鈴華ならリンゴやシイタケと間違って食べるだろうけどあいつの腹なら毒食っても平気だろ」


 一瞬殺人料理人である幼馴染の心配をするが右手を顔の前で振って凛一は空に浮かべた幼馴染の顔を消した。



   ◆




 しばらく歩くと急に木が無くなり開けた場所に出る。

 相変わらず地面は草で覆われているが丁度体育館ほどの空間が広がっていて今までのような巨木は特に生えていない。


 背の高い巨木達に光を遮られることも無く初夏の日差しが照りつけ今までの薄暗い雰囲気が無くなり凛一はちょっと上機嫌で走り寄る。


 するとその空間の向かって右側の木々から鎧姿の爆乳金髪美少女が現れた。

 凛一の心臓が飛び跳ねる。


 身長は凛一と同じくらいで腰まで伸びたロングヘアーは太陽の光を反射して黄金に輝き大きな碧海の青(オーシャンブルー)の瞳には強い意志を感じる。


 筋の通った鼻と小さな唇、それに形の良い眉はそのどれもが最高の美しさを持ち女神や天使のような人外の美しさを感じる。


 肌の白さや顔立ちから考えるとおそらくヨーロッパの人だろう。


 ここがますます外国の可能性が高くなってきた。と考える暇も無く凛一は彼女の鎧の上からでも分かる爆乳と美顔を交互に穴が空くほど凝視した。


 鎧の上からでも分かるというか、まず鎧の胸部自体が大きく膨らんでいる。


 さらに良く見ると少し変わった鎧だった。


 本物の西洋の甲冑はそれこそ足のつま先から頭のてっぺんまでを覆った物だが彼女が着ているのはフトモモや二の腕を露出し首や顔も隠れず兜は額や側頭部、後頭部を守っているが頭頂部は守っていない。


 デザイン的に言っても西洋の甲冑というよりもRPGゲームやアニメに出てくる装飾性重視の鎧で、


「あれ何のコスプレだ?」

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https://dengekionline.com/articles/127533/

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