第44話 ネームド登場!
「メテオストライク!」
秋雨が着地すると、周辺のアポリアたちはねこそぎ炎にまかれながらぶっ飛んだ。
ガラスに空けた孔を通ろうとしているアポリアは振り返り、むしろビルの中に侵入したアポリアまで秋雨を狙い、次から次へと戻って来る。
「いい度胸だな。かかって来いよ!」
秋雨が渾身の力を込めて先頭の胸板にヴォルカンフィストを叩き込む。
爆轟が10体以上のアポリアを消し炭に変えて、ガラスの孔の中に爆炎が雪崩れ込んだ。
間髪を容れずに秋雨は孔からビルの中に飛び込むと、マグマで孔を塞いで固めた。溶岩のバリケードだ。
続けて、秋雨はビルの一階エントランス部分全体のガラス壁を低温のマグマで塗り固めていく。
厚い溶岩の外壁。
その向こう側からは、ドンドン、という殴打音が聞こえるが、破られることはないだろう。
「秋雨!?」
「守里ちゃん!」
二人は互いに掛け合った。
「どうしたんだこんなところまで!?」
「ニュース見て駆け付けたんだよ。早く逃げよう」
「それはできない。ここには多くの社員が残されている。今、アポリアを倒しながら社員たちを上の階層に避難させているところだが、一階のガラスが破られそうと聞いて下りてきたのだ」
「守里ちゃんのバリアで防げないのか?」
「全面となると長時間は無理だな。だが、秋雨のおかげで心配はなさそうだ」
「俺のマグマなら長時間維持できるからな」
「感謝するよ」
頷いてから、草壁は話題を変えた。
「じゃあ秋雨、他の階層に残された社員を上に逃がす手伝いをしてもらってもいいかい?」
「当然。じゃあ手分けして」
「うん。ボクは29階から下を担当するから、君は30階から上を頼む」
「俺が上半分って、さりげなく自分が危険なほうをやろうとしていませんか?」
「先輩だからね。男女差別はさせないよ」
「やれやれ」
言い合うよりも、素直に従った方が早いと判断して、秋雨はエレベーターに向かった。
◆
一時間後。
秋雨は30階以上の階層の社員を屋上や最上階付近へと誘導した。
屋上にはレスキュー隊のヘリコプターが次々到着しており、数百人の社員たちを順次非難させている。
草壁を手伝おうと階段を下りていると、ちょうど、登って来る草壁とはちあわせた。
「あ、守里ちゃん」
「秋雨、そっちも終わったのかい?」
「はい。ていうことは守里ちゃんも終わったんだな。この階層も、誰もいないみたいだしこれで全部かな?」
階の真ん中を通り抜ける広い廊下に出て見回す。
すでに秋雨が担当し終えたので、社員がいるわけもない。
「そのようだね。じゃああとは、レスキュー隊のヘリ任せかな。ボクらは上に行こうか」
「だな」
頷いて、秋雨が一息ついた時。
まるでその油断を見計らっていたかのように、外から凄まじい破砕音が轟いた。
「「うわっ!?」」
何事かと二人が一斉に同じ方向へ首を回すと、金髪碧眼の白人男性が立っていた。
背は高く、190センチはありそうだ。
容貌は美しく、モデルや俳優を思わせる。
首から下は、革製鎧の上から各要所に金属鎧を着た、古めかしい戦装束だ。
この状況下で、こんなコスプレをする人はいないだろう。
それに、灰色の肌と顔に入った青のライン。
その特徴から、秋雨はジャック・ザ・リッパーを思い出した。
「ネームド!?」
アポリアは大きく分けて二種類。
【人】という存在を模倣した雑兵であり黒いマネキンのような姿のネームレス。
そして、特定の【英雄】を模倣した指揮官のネームドだ。
英雄の力をどこまで再現できているかはわからないが、ジャックの強さを思い出せば、ネームドの戦力はネームレス100人分はくだらないだろう。
「……ミツケタ」
「ッ」
先手必勝とばかりに、秋雨はヴォルスターの最大加速で距離を詰めながら、その推進力をそのままに右ひじを噴火させた。
拳は狙い過たず、ネームドの美貌を直撃して紅蓮の爆轟を炸裂させた。
ヴォルスター、イラプションアーツにヴォルカンフィストを合わせた、今、秋雨に放てる最強の一撃だった。
それを顔面に打ち込めば、たとえジャックでも一撃殺せただろう。
――なんだ? この手ごたえは?
秋雨の熱拳はネームドの皮膚と肉、そして頭蓋骨の硬さを感じたし、打撃の衝撃は拳の骨に響いている。
なのに、皮膚を裂き、肉を潰し、骨が割れる感触がなかった。
まるで、床に固定されたサンドバッグを思い切り殴ったよう 英雄の力をどこまで再現できているかはわからないが、ジャックの強さを思い出せば、ネームドの戦力はネームレス100人分はくだらないだろう。
「……ミツケタ」
「ッ」
先手必勝とばかりに、秋雨はヴォルスターの最大加速で距離を詰めながら、その推進力をそのままに右ひじを噴火させた。
拳は狙い過たず、ネームドの美貌を直撃して紅蓮の爆轟を炸裂させた。
ヴォルスター、イラプションアーツにヴォルカンフィストを合わせた、今、秋雨に放てる最強の一撃だった。
それを顔面に打ち込めば、たとえジャックでも一撃殺せただろう。
――なんだ? この手ごたえは?
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