第17話 でいと

「お兄ちゃん…」


「お」


 半袖のセーターの上から被さる様にある、白い半透明のレース。

 歩く度に白くスベスベの美脚を醸し出すミニスカート。

 それら全てを敵に回しても勝てると言うほどの容姿が今、俺の前に現れた。


「…おまたせ」


 結衣は化粧からなのか頬をほんのり薄ピンクに染め、壁を背にして待っていた俺に向けてそう放つ。


「お、おう……」


 組んでいた腕をほどきながら、俺は朧気ながらにそう答えた。

 いや、これには理由があるのだ。

 ────遡ること数分前、何故か出発前に玄関で結衣に、お兄ちゃん先に行っててと言われ、わざわざ俺が待っていた訳なのである。

 同じ場所から出発なのに何故なんだろうと思っていたが…


「…」


 ────え、なにもしかしてコレがやりたかったのか?

 恥ずかしいのか結衣は、俺と目が合うとプイッと目を逸らした。

 全く…最近の女子の行動はよく分からないな。


 俺がそんな事を考えていると、ふと結衣は俺の前を横切横切る────と、チラッと俺に視線を寄こして。


「それじゃ行こっか、お兄ちゃん」


「あぁ、そうだな」


 その振り向きざまの一言に、もう何でもいいやと思った今日この頃の俺だった。


 ────「ちょっと、その気色悪い体を私に押しつけないで下さいよ」


「しょうがないでは無いか?!我の体はおっきいのだ」


「シードおデブ〜」


「なっ!リルよその言葉今すぐ取り消さなければババババババババっっ?!」


「うるさい」


「はい…」


 普通なら死んでもおかしくない電圧の電気ショックをシードの脇腹に食らわせて、沙耶香は視線を私達の隠れる柱の奥へと戻した。

 そこでは優様が、妹である────結衣と待ち合わせしている所である。


(うぅ…優様はいつ見ても美形です)


 いつものゴツゴツとした戦闘服では無く、少し緩めの長ズボンに蛍光色の半袖を着合わせ、ラフにまとめたその姿。

 ファッションという分野に関してはシンプルな姿だが、それはそれで元の素材の良さを際立たせていた。


「沙耶香、優様に見とれてるねぇ〜」


「い、いえ。あくまでこれは任務だからですよっ?」


 そう、これは任務なのである。

 例えとは言え、これは主を守るという大儀の為の任務なんです。

 はい。

 よく分からない言い訳を自分にして、沙耶香は早々に優のストー────元い、護衛という任務に戻る。

 とそこで、シードが私の耳に口を寄せた。


「のぅ沙耶香よ、任務はいいのだがこの変装はいるのか?」


「確かに…」


 珍しくシードに言葉で賛同するアレスに、沙耶香はゴホンと咳払いをする。

そして分かってませんね〜と言わんばかりに両手を天秤の様に上下させて。


「いいですか?これは任務は任務でも極秘任務なのですよ。つまり見つかっては行けないんです!」


「だからってなんでアロハシャツなのだ?」


 そう、今私達4人は皆揃ってアロハシャツなのである。

 え?なんで色んな服がある中でアロハシャツなのかって?

 それはひとえに────…「気分です」


「………答えになっとらんがな」




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