デューク(仮)

四方川 かなめ

プロローグ

「パパ抱っこ」


「しようがねぇなぁ」


言って俺はよいしょと、愛する息子────れんを抱え上げる。

脇の下に手を周し、持ち上げ、胸のところで受け止める。

一方蓮は、両腕を俺の首に回し、落ちてたまるかとばかりにそれを強く抱きしめた。


「ふふっ、蓮はパパにベッタリだね」


そう隣りで言うのは、俺の愛する妻────結衣ゆいだ。

結衣は結衣で、娘のはなを抱きしめている。

その手つきには目を見張るものがあり、やはり抱きなれているなとつくづく思った。


「本当、まじ、重い。これは腰やったかも」


「日頃持ってる人がよく言うよね。」


そう言って結衣は、大事そうに抱える花に同意を求めるように、「ねぇ?」と聞く。

しかしそれに対して、花はギュッと結衣の服を握るだけでないも答えない。

それはまぁ当たり前だ。

まだ言葉も喋れない乳児なのだから。


「お前はいいよな花、ママのおっぱい吸い放題じゃないか。俺は揉みこそするが吸うなんて事は久しく────」


ドゴ


「痛い!」


「もう、昼間の公園でそう言う事言わないの」


結衣から正義の鉄槌をもろに受け、軽く脳震盪のうしんとうを起こしながら、俺はそれを理由にベンチの隣りに座る結衣のヒザに頭を下ろした。

それに伴い蓮も横になるが、蓮は横向きは嫌だったのか、結衣の膝枕に寝そべる俺の体によじ登り、ちょうど横向きで寝る俺の側面に陣取った。

そしてそのまま先程同様、俺の脇腹辺りを抱きしめる。


「全く、この歳で親をしりの下に敷くとは。これは将来やんちゃ坊主になるぞ」


「あなたほどのやんちゃ坊主にはなって欲しくないのだけれどね」


「うっ…」


そんな事言われてもーー仕事ですしーー別に俺やんちゃ坊主じゃないしーー

返す言葉も無いとはまさにこの事。

結衣の柔らかい枕の上でブータれる俺の頭を、結衣はまるで子供でも扱うかのように乱暴に、しかし優しく撫でる。


「でも────」


ふと、俺の顔に影が刺した。

その理由は、もちろん結衣だ。

結衣は先程の目付きとは違い、なにか真面目な事を言う時の目付きをしている。

あぁ、これは聞かなければ行けない奴だ。

と直感的に察した俺は、横向きから仰向けに姿勢を治す。

するとそこには、心做しか顔を淡く染め、こちらを見つめている結衣と目が合った。


「ん?」


俺は言葉の続きを、結衣の真っ直ぐで澄んだ目を見つめながら待つ……と。


「──でも、私はそんなあなたが好きですよ、時々やんちゃで、時々心強い、そんなの事が…」


そこで結衣は、ここ数年呼ばなかった呼び方で俺の名を呼ぶ。

そして一息置き、


「大好きです」


そう言って満面の笑みで笑った。





────2060年────それはのちに科学技術の最盛期と言われ、石油製品から水素製品へと変わって行く、言わば‪”‬時代の転換期‪”‬。

人の暮らしは楽になり…しかし、いつの時代も‪”‬争い‪”‬は潰えなかった。

時代の革命機を迎えてから、戦いはサイボーグ戦が主流になっていた。


ある日突然、反乱軍と名乗る武装集団が地球で1番大きい国の都市を滅ぼした。

それはすぐさま世界中に伝わり、民に不安と恐怖を植え付けた。

しかし反乱軍は言った────私達の目的はただ1つ、世界を元に戻す事だ。

意味のわからない言動を繰り返す反乱軍。

そこで残った国は団結し、各国からデュークという7人の最強サイボーグを選抜した。

この物語は、ある1人のデュークとその妹の物語である。(仮)

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