2
「あぁ、ミサ! 気が付いたんだね。良かった……」
目を開けた時、カリンの心配そうな顔を見て現実に帰った。
夢ではなかったのだと。
アレは確かにマサキさんで。母は死んで。
いや、殺されたのだ。
絶望で叫び出す代わりに私がしたのは、両手で顔を覆うことだけだった。
「ミサ……なんて言ったら分からないけど、私達はあんたの味方だから」
カリンの言葉に背中に冷たいものが這上がってくる。
「母は、何処に……?」
埋葬したのかと口に出しては言えなかった。それに、私はどうしてしまったのだろう?
額に傷があった男の言葉。
『能力者――』
あの、目の前で止まったナイフ。あれを私が?
「おばさんはマサキ……の側に埋葬したよ。それが一番良いと思ったんだ」
墓といっても中は空の墓標。遺体が発見されなかったから、家の裏にひっそりと目印をつけておいた石があるだけ。
とても体がだるくて、起き上がる時は思わずうめいてしまったけど、行かなければ。
「ちょ、ちょっとまだ起きなくても。まる2日も死んだ様に寝てたんだから」
2日も寝ていたことに驚きもしたが、それなら尚更会いに行きたい。まだ、お別れも言ってないのだから。
「カリン、お願い。連れて行って欲しいの」
本来なら墓の中は空で、墓標だけだった筈なのに。
柔らかな陽射しの中、2つの石が置かれ、カリンが何処からか探して来たのだろう、花が添えられていた。
私は墓に近付きながら、体から力が抜けたように崩れ落ちた。
「ミサ、おばさんは直ぐには死ななかったんだよ。最期にミサに悪かった、ごめんよって……」
私は何も言えず、泣くことも出来なかった。
ただ、うつ向き何時までもその場所から動く気になれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます