8
思い付く処は全て捜した。だけど母は何処にも居ず、時間ばかりが無情にも流れていく。
「一体何処へ行っちまったんだろう。町中捜しても居ないなんて……」
「カリン、エイジ、ありがとう。こうなったら待ち伏せするしか無いみたい」
二人は凄く心配そうに私を見つめる。
無理もない、誰が見ても私の態度は普通では無いし、気が触れたとしか見えないだろうから。
その時、高らかに音楽が流れたと思うと、空に向けて銃を撃った様な音がした。
始まったのだ。パレードが。慌てて騒ぎの真っ只中へ走り寄る。
そこは既に黒山の人だかりで、中心に居るで有ろう政府の馬車すら見る事が出来ない。
「ミサ! 居たよ、あそこ!」
母が、居た。
目は落ち窪み人が変わったその表情は憎しみが溢れだしそう。
「お母さん、お願い! やめてちょうだい!」
人を掻き別けながら進んで行く私。スローモーションの様に、目の前で母がゆっくりと馬車に向かって行く。
「何だ? お前は」
馬車の脇に立って居る軍服を来た若い将校が、手を振って下がれとジェスチャーをするが、母は近付いて叫んだ。
「何が偉い軍人さんかね! ふざけるんじゃないよ! 戦争なんかのせいでわたしの息子が……お前達が殺したんだ!」
言いながら投げたのは、家から持ち出した果物ナイフだった!
――私はその時の事を余り覚えて居ない。
気が付いたら、母は血まみれで倒れていて、私の目の前には、ナイフが宙に浮いたまま停まっていた。
「キラ様、如何致しますか? この者、能力者の様ですが始末しておいた方が……」
そう言った男は背が高く、細身で額に斜めに傷がある。まだ、若くミサ達と変わらぬ様に見えた。
――そして。馬車の中から声がした。
それも聴き覚えのある声が。まさか、 いいえ! 違うっ!
「放っておけ、所詮一般市民だ。何が出来るというのだ?」
「でも、組織に入られでもしたら」
「私のいう事が聞けないのか? 分かっているんだろうな?」
違うっ! 絶対あの人では無い! もし、そうだったら何故こんな事出来るのよ――!
「……ミサ、嘘だろ? 信じられ無いよ!」
カリンが呟いた。意識が遠のく中、確かに私はあの人だと気が付いてしまった。
マサキなのだと。
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