#026 “軍隊”としての再出発

 3月末。この日、魔術学院の演習場ではカランクス学院長が卒業していく生徒達に祝辞を述べていた。そして、卒業証書授与式が終わると同時に、“部活”という活動範囲から正式に“軍隊”へと変更した特別作戦傭兵連隊の陸上特別作戦傭兵大隊が主催を務める総合火力陸上演習が行われた。


「我々、特別作戦傭兵連隊は国家の“最後の砦”として最後まで戦い続ける事を誓います! 宣誓せんせい!今日、この日より魔術学院の“部活”では無く、責任を感じつつフォルシア王国の“軍隊”として、この国を護りぬく盾となりましょう!」


 長い宣誓せんせいを誓い終えると新たな軍服に身を包んだ総勢5000人の女性兵士達が一斉に敬礼をした。彼女達は“部活”時代から居続ける者も居ればうわさを聞きつけて駆け付けた元傭兵も居たりする。


「それでは、これより陸上特別作戦傭兵大隊による第1回総合火力陸上演習を実演いたします。 まず、陸上特別作戦傭兵大隊は大きく分けて3つの中隊に分かれます」


 航空支援を主とする陸上航空中隊、戦車や野砲の使用を主とする機甲科中隊、最後に市街地戦などを任務とする陸上攻撃中隊の3つだが、それらを合わせて様々な戦役で運用している。


 航空輸送機で陸上攻撃中隊を戦線に届けた後、野砲特科による支援砲撃を披露したりなどだ。


 一通りの演習を済ませてアルトリア・ラーミスとカトリーナ・メルフォンによる近接格闘戦闘の実演が披露された後、昼休憩になった。


「午前演習はここまでとなります、午後からは領地奪還を想定した演習になります」


 アナウンスを終えると、見せ付けられた陸上特別作戦傭兵大隊陸特大隊による総火力をフォルシア王国の重鎮や頭の古い貴族たちに対して度肝を抜かせた。


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 午後の演習では、仮に他国がフォルシア王国に攻め込んで来た時の対処法を見せる事にした。先ず、偵察部隊が敵影を確認してKLX250に乗って巡航警戒を続け、敵影の動向を追跡し続ける。その間も部隊員が常備している装着式統合目標指定装置ヘッドマウントディスプレイで味方にも情報が共有される。共有された情報をもとに予想される次の襲撃を受ける町村に航空輸送部隊が保有するMV-22オスプレイやC-2などで空挺部隊を輸送する。更に、戦闘に必要な物資などを同時に運び、C-130を改造した蒼空そらの戦車と言われるガンシップのAC-130Uスプーキーによる監視と支援攻撃を開始させる。それでも、想定外にならないように機甲科部隊による行進間射撃や軽野砲特科部隊と重野砲特科部隊で支援攻撃を行う・・・という内容だ。


 ちなみに野砲特科部隊という所属であるFH70や一五五粍自走榴弾砲である七五式や九九式を軽野砲、二〇三粍自走榴弾砲などの大口径野砲を重野砲と呼称している。覚え方は軽巡や重巡の地上版と覚えれば問題ないはず・・・?


 特科による超遠距離射撃支援が降り注ぐ中、MV-22オスプレイに搭乗していた陸上攻撃中隊が戦線を展開して行き最終的に敵役の陸上攻撃中隊を殲滅せんめつ判定にした所で午後の演習が終わった。


 その後、フォルシア王国の重鎮や貴族たちが真っ青な顔色で大人しくなっているのを合図にルメアス・フォルシア王と護衛兼視察のルフ・フォルシア宰相が拍手をし始めた。それにつられる様に親王派の貴族や重鎮らが拍手をし始めた。


「――これにて、第1回総合火力陸上演習を終わります。 お帰りの前に、手土産として使用された弾薬の模造品をお渡しいたします。これからの戦闘は我等われらが先進を逝きます」


 アナウンスが終わるとアルトリア・ラーミスは大声で全部隊に聞こえるように「敬礼!」と叫ぶと一斉に敬礼をしてそこに居た皆を驚愕させた。

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