#023 Ⅰ WILL BE BACK,YOUR PLACE.

 母が寝入ってしまった後、アルトリア・ラーミスがやって来た扉からカトリーナ・メルフォンが姿を現した。


「様子は?」

「怪我はしていない、しかし信頼できる父を失ったよ」


「そう・・・。 ねぇ、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。 ありがとう」


 本当は今すぐにでも泣きたい気分だ、父を失い母が孤軍奮闘し執事や俺を可愛がってくれたメイド達が遺体となって床に転がって居るのだから。


 そんな気持ちを読み取ったのか、カトリーナが無言で背後から抱き着き「今だけ、私の胸。貸してあげる、本当は――こんな事結婚してからだけど・・・」と耳元で囁いて来た。その瞬間、辛うじて繋がっていた理性という鎖が――哀愁というダムが崩壊した。


「はははっ・・・、先にプロポーズされたな」

「初めてだよね、私の一勝よね?」


「ああ、負けたよ。 俺の――いや、結婚相手ライフ・パートナーになってくれるか? カトリーナ・メルフォン」

「――ええ、貴男あなたとずっと。貴男あなた天国そらに行くまで一緒に居るわよ、私は!」


 カトリーナは顔を真っ赤にして微笑み返してくれた、その後地下室で軽めのキスを一度だけして一緒に地上に上がり待機してくれていた九六式装輪装甲車両に搭乗した。


++++++++


 九六式装輪装甲車両の後部座席にエルネア・ラーミスを寝かせた後、アルトリアはカトリーナに「母を頼む、学院まで」と伝言した。


「え? 来ないの?」

「俺は、まだ。やるべきことが有るから。 大丈夫、死に戻りはしないさ」


 そう言うと、7,62×51ミリNATO弾を20発だけしか撃てない64式小銃と.300Win-Mag弾を10発撃てるM24A1を装備してカトリーナを後ろにすると、「Ⅰ WILL BE BACK,YOUR PLACE.」と言った。


 その後カトリーナが見ている前で前世、ジャッカル自身が陸自で使用していたカワサキのKLX250を取り出してそれにまたがるとエンジンを付けて右手を軽く吹かすように3回ほど捻った。


「アルトリア、それは・・・?」


「KLX250、基本1人乗りのバイクさ」


 地を蹴って砂煙すなけむりを上げながら走り出したKLX250に跨っているアルトリアは、砂塵さじんほこりなどから目を守るためにヘルメットを走りながら装着した。


 アルトリア・ラーミスが小さくなるまで見守っていたカトリーナは、背後から来たリクスとヤフォークに声をかけられた。


「あれ?隊長は?」

「カトリーナ、隊長は何処?」


「え? ああ、彼ならやり残したことが有るって言ってどこかに行ったわよ」


 それを聞いた2人は「「だったら、行かないと!」」と言って、九六式装輪装甲車両ではなく随伴ずいはんで来ていた高機動車両HMMWVに乗り込んだ。


「ちょっと、まさか! 支援しに行くの!?」

「そうだよ?」

「なんで――!」

「だって・・・」「心配だから?」


 カトリーナは彼女達が本気だと察して自身もハンヴィーに乗り込み、「ああ、もう! あんた達だけじゃ、心配だからついて行くわよ!!」とツンデレのように叫びこっちを伺っていた彼女達の部下に「あんたたちも来なさい!」と言った。

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