#004 黄色ランク冒険少年――ジャッカル

「「誰だ‼」」


「あら、私の名前を知らないなんて。 悲しいわね」

「ん?その声色は、ま、まさか・・・」


 すると1人の少年が一旦冷静になり、顔が青くなった。


「――いかにも。“神速の剣乙女”とは、私の事よ?」


「「ヒ、ヒイィィィィ‼」」


 2人の少年が一気に後ずさり俺から距離を開けた、良かった。血は流れないみたいだ。


 何でちょっとだけ落胆したのか?それはそれほど、俺がイラついていたから。


「そこのアナタ、大丈夫? 怪我は?」

「あ、ああ。 ありがとう、・・・えーっと」


「私はエフォート・リスタ、貴男は?」

「――アルトリア、アルトリア・ラーミス。今日冒険団登録した名前はジャッカルだ、よろしく」


 ジャッカル・・・、前世のコールネームだ。どれだけこの名前アストリア・ラーミスを弄ってもジャッカルにはならない。しかし、このネームは俺の――前世の人生を証明する唯一無二の証拠だ。


++++++++


 エフォートと共に児童冒険団に帰っている途中ふいに「ジャッカルって、どういう意味なの?」と不思議そうに聞いて来たので、「暗殺者という意味さ、まぁ・・・。有名を目指すなら、これぐらいの名前にしないと漢気おとこぎが無いでしょ?」と笑って答えてあげた。


 ノスタ中央公園近くにある孤児院のような建物が、児童冒険団のギルドだ。受付に首から下げるタイプのドッグタグを提出するとニコヤカなお姉さんが「お疲れ様、ちょっと待っていてね」と言って刻印機にタグを置いて何かを刻印し始めた。


 刻印されたタグの色が最低ランクの白色から黄色に変わったので「あら? ランクが上がったのね」と、同じく黄色のタグを持ったエフォートが声をかけて来た。


「ああ、まだ。駆け出しだけどね」


「でも嬉しいじゃない、ランクが上がるって事は――褒められた事だから」


 そう言ったエフォートの表情が少し曇ったのを、俺は不思議に思った。


++++++++


 その日は心優しい宿屋の女将おかみさんが1泊無料で泊めてくれたので、1枚の銀貨を御礼のチップとして泊めてもらった部屋の机に置いといた。


 翌日。児童冒険団のギルドを訪れると、昨日と比べて騒がしかった。しかし、アルトリアは真っすぐに受付に行きタグを置いた。


「少々、待ってくれる?」

「え、あ・・・はい」


 受付のお姉さんが裏に消えると同時に絡んできた少年2人が、昨日と同じように絡んできた。


「俺達よりも子供のくせに、“神速の剣乙女”と仲良くしていたよなぁ?」

「そうだ、そうだ。 恨みしか出てこないから、表に出て俺達とケンカしろ!」


 八つ当たりか・・・、まったく。まぁ、コルト・パイソンの実射試験をあまりしていなかったからいい機会だな。


「――いいですよ、1対2でも問題ないですよ?」


「アハハ・・・! こいつ、強がってヤンの!」

「ハハハハハ! 怪我しても知らねぇぞ!」


 その会話を奥からちょうど出て来たエフォートが聞き耳を立てていたのを、その場にいた全員は知らなかった。


++++++++


 ギルドが管理している練習場に俺は居た、コルト・パイソンを持って。


 銃口マズルから白煙を出している先には、地面に顔を疼くめた姿で足首を両手で抑えている2人の少年が居た。


「うぅ・・・」


「いてぇよ・・・、いてぇよぉ・・・!」


 こうなったのは数秒前、エフォートに腰を抜かしてどっかに逃げて行った少年2人にタイマンを吹っ掛けられたからそれを買った。そして練習場に連れて来られていざ始まれば脳筋みたいに剣1本で突撃してきたから何の躊躇ためらいもなく素早くホルスターから抜いて即時射撃クイックドローを片方の1人に決めた。


 その後、もう1人が怖気ながらも突撃してきたので「へぇ~・・・、逃げないのか。漢だね、でも――そんな剣で何が出来るのかなぁ?」と嘲笑いながら撃鉄を押し下げて照準を即座に少年の足首に向けて引金を引いた。

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