未来ダジャレ

あーく

未来ダジャレ

「こんにちは」


「え?なに?ここ」


「よく聞いてくれ。ここは千年以上も先の未来だ」


「え!?なんで!?意味わかんないんだけど!?俺なんでここにいんの!?てかここどこ!?」


「落ち着いてくれ。パニックになる気持ちはわかるが、どうにか抑えてくれ」


「誰か!誰か助けてくれ〜!」


ゴッ!


「……」


「やっと静かになったか。昔の人類はやはり拳で語り合うんだねえ。野蛮だねえ」


「……いや、語り合うと言うか、一方的っていうか」


「さて、本題に入ろう。いいですか、落ち着いてよく聞いてください」


「その入り方だとろくな事にならないだろ」


「私は社会の先生だ」


「え?何?先生が暴力振るってんの?教えてるの裏社会じゃないの?」


「今度『日本の歴史』というテーマで授業しようと思ったのだが、実際に日本人に来てもらった方が早いと思ってね」


「……」


「タイムマシンで君に来てもらったわけだ」


「タイムマシン!?

というか、今さりげなく日本人って言ってたけど、ここは日本じゃないのか?」


「ここは宇宙ステーション102-357-1240だよ」


「『だよ』って当然のように言われても分かんないんだよなぁ。あれ?ここが宇宙ってことは地球は……」


「残念ながら地球は無くなってしまったんだ」


「うわぁ!知りたくなかった!」


「そんなことはいい。タイムマシンには時間制限があってね、君はあと一時間経ったら過去に戻ってしまうんだ。だから手短に頼む」


「地球の滅亡を『そんなこと』で片付けるなよ。僕らにとっては重要なんだから。で、何を話せばいいんだ?」


「『ダジャレ』についてだな」


「なんでそのテーマにしようと思った。他にもっとこう、あるだろう」


「現存する地球の資料が見つからなくてねぇ。特にダジャレの詳しい資料が見つからないんだ」


「……確かに、ダジャレってわざわざ資料に残そうとは思わないもんな」


「そこで君の出番だ!君はちょうど知識をつけ始めたダジャレ盛りの小学高学年の男の子。その中で抽選をしたらたまたま君が選ばれたわけだ」


「う……」


「さぁ、わたしに最高のダジャレを見せてくれ!言っておくが、地球があった頃と今とでは状況が全く違う。わからなかったら説明してもらうかもしれないから覚悟してくれ」


「ダジャレを解説するほど虚しいことはないな。

そうだなー、急に言えって言われてもなー。……一番使うのは『』とか?」


「布団?布団とは?」


「布団を知らないのか。えーと……。日本人は布団で寝るんですよ。ベッドの人もいるけど……」


「ベッド!あぁ、ベッドか!」


「ベッドは分かるんだな」


「今では『フローティングベッド』って言って、宙に浮いて寝るんだよ」


「何そのベッド!?」


「じゃあそのダジャレは今では『フローティングベッドがふっとんだ』ってことになるね!」


「全然ダジャレになってねー!!」


「おや?なぜだ?」


「ダジャレはその言葉を使っていないとダメで、『布団』と『ふっとん』の部分が同じなんですよ――ってなんでこんな解説しないといけねーんだよ!恥ずかしいだろ!分かれよ!」


「うーん、今の子は布団が分からないからなあ。もっと今風なのを頼むよ」


「今風がどんなのか分からないけど……じゃあ『の上に』とか」


「あー、アルミ缶ね。今はアルミ缶じゃなくて『スペースマテリアル』という万能の素材で缶が作られていてだな」


「アルミ缶も今は無いのかー」


「Space Materialを略して『SM缶』と呼んでる」


「略し方!!なんなら缶の部分も英語にしろよ!」


「ミカンはバイオプラントで培養しているのであるのだがね」


「ふーん。『プラントで』ね……。プッ!」


「それでは次のダジャレを頼む」


「いや、スルーかよ!完全にできてたろ今!」


「『バイオ』と『バイヨー』……。ああ、そういうことか!」


「やっと分かってくれたか」


「ああ、だんだん感覚が掴めてきたぞ。他はないのか?他は」


「そうだなぁ……。『ろんだ』とか」


「猫かぁ。今は絶滅してしまってるなあ」


「この時代には猫はいないのか。まさか、猫がいないんなら他の動物もいないんじゃないのか?『』とか『はつ』とか『をくだ』とか」


「うーん。猿も、ライオンも、くだサイも絶滅してしまってるなあ」


「最後のは動物じゃねえよ。

じゃあ虫は?『のう』とか」


「ゴキブリは生きてる」


「畜生!あいつらはあと何年生きるつもりだ!」


「虫といえば、『エイリアンフライ』とか『コスモスキート』とかは時々侵入してくるねえ」


「分かんねえよ!名前からして明らかに地球外生命体だろ!」


「『エイリアンフライが、ありえんくらいフライ』。うーん、難しいな」


「頑張らなくていいよ!そんな長い名前難しいから!」


「くそっ!時間がない!頼む!僕たちが分かる範囲でダジャレを作ってくれ!子供たちが分からないから!」


「昔あったものはほとんど無くなってるから分かんねえよ。そういえば少し冷えてきたな」


「寒いのかい?」


「うん。ここら辺に『マフラーは?』」


「……」


「……」


「マフラーとは?」


「マフラーはないのかー!」


「マフラーはないが、この『テンパーチャーアダプタースーツ』のお陰で暑さ寒さは防げるのだよ」


「じゃあマフラーの代わりにそれでいいんじゃないか?」


「『テンパーチャーアダプタースーツは?』。どうだ?」


「なんかもう文が長過ぎでダジャレに聞こえないんだが。普通に質問されてる気分だな」


「『スーツは?』」


「もうそれでいいだろ」


「いや、これだとフォーマルスーツなのか、グラビディスーツなのか、バリアースーツなのかわからなくなるよ」


「そういう細かいことはいいんだよ!もう時間ないんだろ!?」


「いやあ、いい勉強になったよ。礼を言う。もうそろそろ時間が来るところ申し訳ないのだが、言い忘れたことがあってだな」


「?」


「君がここに来たという記憶を消去させてもらう。君がもし未来の出来事を覚えてて、未来を変えてもらっては困るからね」


「ええー!?……うーん、まあそうだよな」


「ほう?を消されるのはではないのかい?」


「だって仕方ないもん。そろそろ地球に戻りたくなったし」


「そうか。じゃあ記憶を消したらタイムマシンに連れから、すぐにオフするよ」


「……」


「記憶はするけど、あまりく的にならないでね」


(めちゃくちゃ使いこなせるようになってるー!)




――過去の地球のちょっと未来


「博士!『テンパーチャーアダプタースーツ』が完成したと聞きまして、一言お願いします!」


「一言って言われても……。『スーツは?』」


「……」


「……はい、この寒さも防げることを期待しています」

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未来ダジャレ あーく @arcsin1203

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