問題あり幽霊調査隊
織宮 景
我ら、幽霊調査隊!
「幽霊調査隊参りました!」
元気よく依頼人の前に登場する2人の男。彼らは幽霊を調査して祓うといったゴーストバスターの仕事をしている。そして今日はカップルが住んでいる住居に訪れた。どうやら誰もいない地下室で物音がしたり、勝手に閉めたはずの窓が開いたりするらしい。それらの怪奇現象が幽霊によるものではと今回の依頼を出したという。
「隅から隅まで徹底的に幽霊を祓いますので、依頼人のお二人は外でお待ちください」
「分かりました。必ず幽霊祓ってくださいよ」
カップルは家の外で待機する。
家に残ったのは幽霊調査隊入社5年目の先輩と2年目の後輩。2人とも霊を視認でき、祓うことができる能力を持っている。
「よし。場は整った。地下室は俺に任せろ。お前は地上を見てくれ」
「了解です」
手分けして探すことになり、後輩は例の窓が勝手に開いたという部屋に行く。
大抵、霊がいる部屋というのは入ったと同時に嫌な気配がするが、そういったものは無かった。一応、念入りに見たが、特に何も無い。依頼者の勘違いだったらしい。やることがなくなった後輩は先輩の元へ向かった。
先輩がいる地下室の梯子を降りている途中で身震いする後輩。
「おう!後輩。そっちはどうだった?」
「こっちは何もいませんでした。恐らく依頼人の勘違いでしょう」
「そうか。まぁ閉めてなかったことを忘れてたとかそんなところだろうよ」
「そうですね。というか先輩、誰と抱きついてるんですか?」
先輩が何もない空間に腕を巻いていた。一般人ならただの変人に見えるが、後輩には恐ろしい光景が見えていた。
半透明な女の幽霊に抱きついていたのだ。それも顔を真っ赤にして。
「こんな可愛い子猫ちゃんがいるとは思わなかったよ」
「先輩………。それ何か分かってますか?」
「ああ。分かってるとも。俺の彼女だ」
『キャーーーーーーーー!』
幽霊が奇声をあげる。この声は幽霊が人を呼び寄せるために出すものだが、この状況でそれを見ていた後輩には、女性が痴漢されて助けを求めているように見えた。そう。先輩がこの仕事を選んだ理由は色々な幽霊に会いたい幽霊愛好家だからだ。
「子猫ちゃん、落ち着いて。一緒に深呼吸しようね。吸ってーーー吐いてーーー」
「先輩。幽霊は呼吸しません」
「君、子猫ちゃんに失礼だろ!この子も元は人間だったんだ。もっと優しくしてあげなよ」
「いいえ。今は人間じゃないです。さっさと離れないと先輩の霊体ごと除霊しますよ」
幽霊と先輩を祓うためにお経を読む準備をする。
「待つんだ。後輩くん。今からが本番なんだ。後もう少しでチャンスが来る」
「ええ。今こそ霊と変態な先輩の両方を祓える絶好のチャンスです」
「いや、違う。そんなチャンスではない」
先輩がチャンスだと言うと、抱きつかれている女幽霊の顔が赤くなり始めた。そして先輩がその隙に霊にキスをする。すると、だんだん幽霊が消えかかっていく。これは霊が成仏をする直前に見せる現象だ。
「俺の彼女よ。Good night」
こうして無事に霊は成仏していった。
その後、依頼人に霊を祓ったと伝え、今日の仕事を終えた2人。
「先輩。そろそろこの成仏法やめにしませんか?」
「えっ?なんで?」
「今回は女性でしたけど、前の依頼の時は………」
ただ幽霊を見るより悍ましい景色を思い出した後輩であった。
問題あり幽霊調査隊 織宮 景 @orimiya-kei
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