第5話



 5話


「それで、教えるのは良いがお前さんはどんなダンスをしたいい?」

「どんなダンス?」

「えっとな。…ちょっとまて。」


 田中さんが着たから消していた、音楽をつけた。


 もしかして、踊って教えてくれるのかな?まだ全然ダンスの事は知らなかったから、プロのダンスを時価で見ることが出来るのは嬉しいな。


「まず、王道中の王道。一番人口が多いブレイキング、ブレイクダンスだ。」


 ・・・たぶんだが、俺に分かりやすく軽く流して踊っているのだろう。だから、分かる。

 この人は上手い人だと。


「今のがエントリー。そしてこれが!フットワーク。これもブレイキングのムーブだ。」


 同じブレイキングのムーブと言ったが踊り方が大きく変わった。


 全身で立ちながら踊っていたのが、フットワークになった瞬間に屈んだ状態になり上半身5の下半身5だったのが上半身3下半身7くらいになり、体を横にして使っているせいか大きく見える。


「そして、ブレイキングの中で一番派手なのが、パワームーブだ!!」


 そして、出てきた技は俺が一番見た事が有る、そして技の名前まで知っている「ウィンドミル」であった。

 それはテレビで見るよりも派手で名前の通り、パワーがあるダンスだ。


「・・・ふぅ。これがブレイキングだ。よし、次はロックだ。」


 さっきと同じ曲のまま、また踊った。

 ロックといったダンス。さっきのブレイキンに比べて緩いと言うか。俺の感想だが結構見慣れている気がする。


「ロックは集団で踊る時によく見るな。ストリートとかで見る事はあまり無いと思うぞ!ふう。・・・後はポップだな。」


 ポップ、ポッピング。そのダンスはやはりさっきのダンスたちとは大きく変わったものだあった。


「ポップは独特なムーブが多いが、それにはまる奴も結構多い。・・・マイケルジャクソンのムーンウォークもポップの仲間だぞ。」


 へー。それはなんか面白そうだな。正直ロックよりもこっちの方が好きだ。なんか人形っぽくてイメージがしやすい。


「そして、ハウス。これは疲れるから一回しかやらないぞ。」


 そうして、深く深呼吸をして始めたダンスは、速いビートの音楽に流れる様な足さばき。・・・正直ダンス初心者の俺には沢山足を使うんだなくらいしか分からない。

「ふぅ。どうだった。」


 剛毅さんはもうへとへとみたいで、座ってしまっている。

 確かにあれだけ俺に分かりやすく踊ったのだから、疲れるだろう。


「凄かったです。ダンスって色々種類があるんですね。」

「あぁ。今回やったのはダンスの中でも代表的なやつだけだ。だから、数だけで言えばもっと膨大なほどある。」


 へ~ダンスって意外と奥が深いんだな。


「俺のダンスを見て見て何か目に付いたのはあるか?」

「あ~・・・まだ頭の中で消化できてなくて。どれが良いか決めれません。」


 色々なダンスを見せてくれたけど、正直どれをやればいいか分からない。


「最初は何でも良い。やりたいやつをやってダンスが好きになればいいんだから。」

「・・・それなら、ポッピンとか面白そうでした。」


 あの独特な体の動かし方がどこか、俺の心に刺激を与えていた。たぶん、パワームーブとかも面白そうだとは思ったけど、なんか違うなと思ってしまった。


 たぶんだけど、俺のスポーツ歴が作ったこの肉体なら無理やり出来てしまうのではないかと、思ったからなんだと思う。・・・思いあがりすぎかな。てへ。

 後はダンスの好みがポッピンだったって事かな。


「ほう!随分珍しいのに行ったたな。最初はブレイキングとかロックとかを選ぶと思ってたが。・・・確かに、ポップは何か引き付ける物があるよな。分かる。」

「でも、一番最初にやるダンスがポッピンなのは大丈夫なんですか?」

「ん?なんでだ?」

「いや、ダンス界だと、ブレイキングくらい踊れないとダメだ!とかのは無いのかなって。」


 スポーツ界隈だとあんまり聞かないかも知れないが、ゲーム界隈。それもFPSとかだと前キャラ使えない奴はゴミだとかそう言うのは聞くから。


 そういう、暗黙の雰囲気があるなら先に聞いておきたい。


「あ~一部の人は思ってるかもしれないな。・・・でも俺の周りで、そんな風な奴は居ないから大丈夫だと思うぞ。」


 あ~そんな感じか。それならいいかな。


「それなら、ポッピンをやってみたいです。」

「OK!俺もそこまで専門的にやっているわけでは無いから基礎的な事だけになるが、ちゃんと教えてあげよう!」

「ありがとうございます。」


 ☆


 それから数十秒たった頃、剛毅さんは息が落ち着いたようで、教えてくれる体勢に入った。


「まずだ、ポップに一番大切なのは何か分かるか?」


 なんだろう?動きがブレイクダンスと比べれば動かし方が遅くて、ロックと比べれば、そこまでカクカクした感じじゃない気がする。


 だけど、何でポッピンが良いなと思ったか分からない。


「ポップ。ポッピンの名前の由来は筋肉を弾く《・・・・・》だ。つまり、ムーブの中で筋肉を弾く事をよく使うんだが・・・・よく見てろよ。・・フ!!」


 剛毅さんの体をよく見ていると、「フ!!」と言った瞬間、体が・・・ブレたような。一瞬だけ、何かをやったんだと言う事は分かった。


 だけど、何をやったか分からない。筋肉を弾くと言ったから、それに関してだろうけど今俺にやれと言われても出来ない気がする。


「分かったか?これがヒットだ。筋肉を一瞬だけ膨張させるムーブだ。・・・分かんねえか?」

「すみません。」

「・・・こっちに来て、俺の筋肉を触ってみろ。」


 膨張といってもどうやって膨張させるんか教えてくれんと・・。と、思いながら、剛毅さんの筋肉を触った、その瞬間。腕の筋肉が鼓動を打っている。そんな感じがした。


 腕に心臓があるような。


「筋肉に力を入れると、筋肉は大きくなる。運動をしていたなら分かるだろ。」

「はい。バスケの時はそれを意識して、シュートをしてましたから。」


 試合中だといつもよりも力が籠っていたりとかは日常茶飯事な事だ。だから、いつも練習と同じシュートができるように。それで、最初に思いついたのが「自然体」だ。


 力は込めれば込めるほど高くなってく。いわば上限が見えない。と言うか、でも脱力状態は0だ。それ以上もそれ以下もない。だから、いつも「自然体」。つまり力を入れないようにしていた。


「ヒットはそれを一瞬のうちに。つまり力が0の状態から一気に100にする。そして、一瞬のうちに0にする。0 100 0がヒットのやり方だ。」


 えっと、今腕が心臓の様にデカく成ったり、小さくなったりを繰り返しているんは、短時間にそれを繰り返しているからか。


「ポップの第一関門はこのヒットだ。言ってしまえば、感覚的な物だから出来ない奴は結構多い。俺の友人にも1年間出来なかったみたいなやつはザラにいた。」

「・・・」


 ダンスの名前になるほど大事な技術。これが出来なきゃ、ヒットは出来ない。・・・がんばらなきゃな。


 サッカーの時もバスケの時も、俺は才能があったと自負している。他のスポーツもやっているのに、全国でスタメンを張れるほどにまでなっていたんだから。


 だけど、ダンスに才能があるのか。。。ヒット。この技術はたぶんだが才能の積み重ねで出来る技なんだろう。

 だから、たった1日で出来るなんて甘い考えで挑むのはダメだ。部活でやる様な振付なら、1日である程度形にできる自身はある。それは今までのスポーツ知識でのごり押しだ。


 ヒットは何の知識もない状態なのだ。


「・・・まず、腕にゆっくりでいいから100の力を入れていけ。」


 10、50、70、90、そして100。力を入れていくにつれてドンドン筋肉が膨張していく。デカくデカく。

 これがさっきの鼓動の様な筋肉なんだと、体で感じられた。


「その感覚を忘れるなよ。100になったら、一気に力を抜く。100から0だ。」


 ぐぐぐと、力を入れていた筋肉は10に到着した瞬間に力を抜いて0になった。


「しぼんだか?ゆっくりだがそれがヒットだ。もう一回やってみろ。」


 一気に100。・・・ふん!、で0に。


「分かってきたか。」

「はい。筋肉がギュっと広がって、0にした瞬間縮んで行く。わかりました。」

「それなら、次は手は握らないで。腕は曲げないで。肩を動かさないように。・・・それでやって見ろ。」


 いつの間にやっていた、力を入れやすい体勢。・・・その体勢を解いた瞬間。

 力を同じように入れる。・・・難しい。


「ゆっくりでいい。ぐぐぐと力をいれろ。」


 言われた通り、ちょっとずつ力を入れる。するとさっきの様に、筋肉に100の力を入れることが出来た。


 ・・・これ、緩急のダッシュでやったことあるな。

 また、バスケになるのだが、ボールを持った瞬間相手を振り切るために、0のスピードから一気に100までで上げる。


 すると相手はワンテンポ遅れるからわりと簡単に、抜けることが出来た。

 たぶん、そのワザと結構似ている所が有るな。


 ただ、バスケの時は0から100にしたとき0に戻すんじゃなくて100のままずっとドリブルをする。

 つまり力を抜かないのだ。

 そこんところはこのヒットと大きく違う気がする。


 ・・・あ、なんか緩急のダッシュを思い出した瞬間、やりやすくなった気がする。


「・・・出来ていそうだな。・・・それならこのテンポでヒットを繰り返すぞ。」


 付けたのは俺が知らない曲であった。


「・・・はい、はい、はい、はい。」


 やばい。・・はや、、い。力を入れるのは完璧だと思う。

 だけど、力を抜くのがまだ難しい。


「・・・0に出来ていないな。どんなイメージでやってる?」


 イメージ。どんなイメージなんだろう。

 ただ、0から100にして0にするのを筋肉を動かしてやっているだけだった。


 ・・・イメージか。力を抜く感覚。・・・分散する感じか。


「力がふわっと、水蒸気の様に抜ける感じです。」

「・・・それだとゆっくり過ぎる。早くだ。」


 ゆっくり過ぎる。・・・水蒸気、、じゃないな。これだと遅すぎるなら。


「なんかとどめていた力の鍵を解いた感じ。」

「その力は鍵を解いた後どんな風に消えていく?這い出る感じか?それとも猛獣の様に獰猛な感じか。

 もしくは風の様に確認した時には居ない感じか?どうだ?」

「・・・光。無限の速度で・・・雲散するように消えている。」

「・・・完璧だ。」


 いつの間にか閉じていた瞼を開けると、関心したような剛毅さんとマネージャーの田中さんが立っていた。


「どうでしたか。」

「俺もここまで速くコツをつかむやつは初めてみた。後は何回も繰り返したら自然に出来るようになる。」

「ありがとうございます。」


 技術を感覚だけじゃなくて、イメージで伝える人は初めてな気がする。今まで理論的で、体がどんな風に動くかを解説してくれる人には無限に合ってきた。


 だけど、実際に体を動かすのは理論じゃなくて、感覚、そしてイメージなのだと、分かった気がする。理論は大事だと思う。だけど、それでも、力を入れる感覚を理論的に言われても出来ない。


 だから、こんな教え方があるのかと、少し驚いている。



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