第86話 出発
いよいよ伯爵さまの館を出発する日がやってきました。
そうは言ってもこの街、オーリグーと王都ジュリグーは馬車で3日もあれば到着するのだとか。
早馬で一騎駆けならば一日で到着できるのだそう。
速度重視であれば馬車でも強行軍であれば丸1日で到着できるのだとか。
ですが急いではいないので、ゆっくり3日の日程で移動する事にしました。
予めスケジュールは決まっていましたから。
荷物も各自空間拡大の付与がなされている、若しくはドロップアイテムの収納かばんを所持しているので身一つみたいな感じです。
サティ4姉妹はそう言うカバンを所持していなかったのですが、ダンジョンでのドロップアイテムに収納かばんがあったので、パーティーメンバーは全員所持しています。
ニネットさんは小さいカバンを所持していましたが、これは伯爵さまから借りていたそうで、今回はニネットさんも手にしているんです。
「ねえ、本当にいいの?売れば相当な金額になるよ?」
何故か中々受け取ろうとしなかったんです、ニネットさんは。
「うーん、だけどダンジョンで収納かばんは沢山ドロップしたんだよ?20個ぐらいあったよね?だから人数分の収納かばんを確保しておいたんだ。遠慮しないでね。」
ダンジョンの90層以降で、【キング】ではなく【クイーン】の個体がドロップしたんです、確か。
売れば大白金貨間違いなしらしいですが、折角だから使ってもらってます。
勿論疾風迅雷のパーティーも全員所持しています。
そうそう、あのパーティー、オーリグー初のA級パーティーになったそうです。
国宝級の武器を手にしてからは何度もあのダンジョンに挑んでランクを上げたようです。
で、今目の前には疾風迅雷のメンバーが全員集まっているんです。
僕達の出発を見送るんだとか。
「ショースケ、今度会う時は数年後か?ショースケが戻ればあんたが立ち上げる【クラン】に入らせてもらうよ!」
クラン:冒険者は基本6名までのパーティー構成だが、時によっては数十名の集団になる事がある。
こうした場合に対応するのがクランだ。
冒険者は必ずしも戦う訳ではなく、薬草採取を行ったり、山で鉱物を採掘するのも冒険者。
そしてそれらを加工する人々の存在。
そう言った人の集まりをクランと言う名目で登録している。
クランにはダンジョン等で活動するパーティーが複数登録している事も珍しくはない。
これもコラリーヌさんから得た知識です。
自身の所属するパーティーですらまだ名前がない段階なのに、それを飛び越えてクランとか・・・・ないない。
だけどヘリットさんは真剣そのもの。
10歳の僕に対し、彼らは皆20歳を超えています。
そんな彼らが真剣にそんな事を言ってくるんです。
「その前に疾風迅雷中心のクランを作ったほうがいいと思いますよ。」
「そう?じゃあ分かった!先に立ち上げておくよ!」
ミルテさんがそんな事を言っていたのですが、僕はこの時勘違いをしてしまいました。
ヘリットさんかミルテさん名義で立ち上げると思っていたんです。
ですが、これは僕達が魔法学院で学び終えて再びオーリグーに戻るまで気が付かなかったんです。
何せ学院で学んでいる間は一切冒険者としての活動をしなかったからです。
そう、何故か僕が関わっていないにもかかわらず、僕名義でクランが立ち上がっていたんです。
あの時ミルテさんの見送ってくれる時の顔に違和感を感じたのをそのまま確認しなかったのが悔やまれます。
この日、僕は異世界に転生してから初めての旅に出ました。
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