第9話 彼女と友達の秘密
「また雨かよ~。本当に多いな~」
桐花の声が教室に響く。
「明日休みだから別にいいじゃないですか。それとも西川さんは3日連続の雨でも鬱になるのですか?」
「んなわけあるか!俺の心はなぁ~、太陽のように熱く、鋼のように頑丈なんだぞ~」
桐花のツッコミ待ちの言葉に麗華は何も言わなかった。
代わりに可愛そうな人を見るような目をしていた。
「あー、あのさ。1つ聞いてもいいか?」
その状況について行けてない者が1人。
そう、千代だ。
「何だよ千代?」 「何ですか天動君?」
2人して千代を変な眼差しで見る。
まるで千代がおかしな人であるかのように。
「そんな目で俺を見ないでくれ。…って!そうじゃなくてだな!」
千代もまたツッコミ待ちのような発言をしたが全く相手にされずにいた。
そして代わりに麗華から飛んできた言葉がこれだ。
「天動君は早く帰らないのですか?まぁ西川さんも同じ事が言えますが…」
「俺は千代と帰るから待ってるだけだっての!」
「何故このような会話でそんなに言葉を強く出来るのですか?私には理解不能です」
「何だと~!」
桐花と麗華の言い争いが遂にデッドラインに達した。
(やばいやばいやばい!)
「とりあえず落ち着いてくれ!俺が言いたいのはどうして2人が仲良くしてるかってことだ!」
千代が無理矢理質問をすると桐花はその質問に対して笑った。
(…本当に桐花は何考えてるか分かんねぇなぁ~)
呆気にとられている千代に麗華が冷静に答えた。
「まぁ…利害の一致と言うものです」
「利害の…一致?」
端的に説明するとこうだ。
実は桐花はエリスのことが好きなようだ。
だがエリスのことが好きな者はとても多い。
その時桐花は思いがけないことを考えた。
「もしかして斎藤さんなら何か知ってるかも?」
そう思い麗華に話しかけてみると…
「まぁ軽い接点程度にはありますが…だから何だと言うのです?」
「えっとな、こんなこと他人に言うのは恥ずかしいが……俺の恋を手伝ってくれ!」
その言葉を聞いた途端、麗華はノータイムで答えた。
「いやです、お断りします」
「どうしてだよ!俺と斎藤さんの仲じゃないか!?」
(いつからそんなに仲良くなりましたか?)
「ともかく!こちらに利益がなければ手伝う義理はありません」
麗華がきっぱりと言うと桐花はうなだれていた。
まるで初恋がフラれた者のように。
「俺じゃ…話しかけられないんだよ…」
悔しさ半分悲しさ半分の低い声が麗華の心を動揺させた。
だが麗華の心に1つの余計な思考が生まれた。
(…?もしここで西川さんを手伝わなければ私は千代君に嫌われてしまうのでは?)
うなだれる桐花と余計な思考をする麗華。
それは傍から見ると滑稽でしかなかった。
そして遂に決断した。
「仕方ありません!そこまで言うのであれば手伝いましょう」
「本当か!?」
そうして今に至るようだ。
「まぁ…利害の一致だがなんだか分からんが俺に手伝えることがあったら言ってくれよな」
桐花はその言葉を待っていたかのように食いついた。
「だったら今すぐ手伝ってくれ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます