試作型短編51話 数あるラブレ……いやこれはちょっと違うよな……?
帝王Tsuyamasama
試作版短編51話 数あるラブレ……いやこれはちょっと違うよな……?
『
好き
』
(……えっと…………)
入っていた封筒は白いだけだった。柄もなければ差出人の名前も宛名も書かれていない。切手すらもない。
俺は高校一年生になったことを機にひとり暮らしをしている。
生徒も保護者からも人間関係の評判がとてもいいからっていうその情報だけでやってきたようなものだったけど、確かによそから引っ越してきた俺でも一年間で結構友達ができたと思っているし、勉強や部活も問題なくこなせているとは思う。
(んにしてもこれは~……ラブレター、なのか……?)
ひょっとしたら他の住人のポストと間違えて入れちゃったのかもしれない、とか? どのポストも銀色でびちっと並び、黒い文字で部屋の番号だけしか書いてないからなぁ。
住所も書いてないし切手もないんだから、直接入れたことは間違いないんだろうけど……。
(と、とりあえず様子見ってことで……ほんとに俺宛てだったらまた入れてくるかもしんないし)
俺は便箋を封筒に戻し、普段宿題するのもごはん食べるのにも使っている折り畳み式灰色テーブルの上にラブレターらしき物を置いた。
十二月に入ったばかり。二学期の終業式まであと三週間くらいだ。今年最大(しかもぶっちぎり)の謎が舞い込んできた。
(……んぇ~っと…………)
『
好きっ
遥斗くん』
三日後にはこんなのが入っていた。同じ封筒同じ便箋だが、情報がちょっと増えていた。
とりあえず俺宛てなのは間違いないらしい。うん。ほんとその情報しか増えてねぇな!?
いやっ、こうさ、普通ラブレターもらったら「うっひょぉーーー!! 女子からのラブレターちょーうれぴー!
だがこのとりあえずラブレターらしいやつ~程度だと……んむむむ。
また住所や切手とかがない。やはり俺の家ってことを知っている人物ってなるよな。
俺引っ越してきた勢だから近所の人って可能性は低くて学校のだれかかなとは思うが、こんな情報量じゃそれすらもよくわかんないし。
(俺に筆跡鑑定技術があればっ……!)
最初は二文字だったからよくわからなかったけど、ちょっと文字数が増えた今回のを見ていると、字はきれいさとかわいさが混じったようないかにも女子って感じ。丸さがちょこっとありながらも字の大きさや各パーツとかが整っている。特に『遥斗くん』の文字を見たらそう感じた。
(ん~そんなに女子の字をまじまじと見てるわけでもねぇしなぁ~……)
明日とあさってが土日。もう少し様子を見るか……? でもこれ相手からしたら返事待ちのまま時間経ってるだけなんだよな……。
(俺のこと、そして俺がこのアパートに住んでいることを知ってるんだから、そういうやつを片っ端から聞いてみるか……?)
俺はまたテーブルの上に封筒を置いた。
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