第39話 休日
~~ 買いだし ~~
左腕の骨折が治るまでは、動物病院も指示をだすだけとなった。でも、フィアもミズクも、それにザビもいるので支障はない。ルゥナの畑仕事も今は軌道にのって、力仕事が必要なときだけザビに頼る、という感じだ。
動物たちも、最初はザビのことを怖がっている感じがあった。鬼人族は、動物を狩ることも多い。魔獣でさえ倒す鬼人族だから、森を歩いても特に支障がない。だから森に入って動物を狩り、タンパク質を確保する。動物たちには鬼人族のことが怖くて仕方ないのだ。
でも、ザビはここの流儀を受け入れてくれたので、動物たちも安心してくれたようである。
そのとき、ふと気づく。「ザビは着替えが少ないの?」
「これと同じ服が三着あるだけよ」
ノースリーブの和服のようなもので、動物の世話をすると汚れやすいので、三着しかないと色々と大変だ。
「ナナリーの町に行くか……」
「やったーッ!」
四人が喜ぶ姿をみて、人間嫌いのボクにとっては憂鬱だけれど、これは女の子たちへのサービスだと思うことにしていた。
ザビにもマスクをつくってあげて、五人で出発した。ボクの樹木による転移は、人数が増えても手をつないでいれば、何人でも可能だ。ザビはすでに何度か体験しているけれど、「鬼人族に、こんな便利な魔法はないよ」といって、毎回驚いている。その辺りは戦闘に特化した民族らしい。むしろ、体力が有り余るので、走ってナナリーの町に行ってしまうぐらいだ。
買い物は四人に任せた。ここでは獣人族もふつうに買い物できるし、鬼人族であるザビも、マスクさえしていれば人族として買い物できる。財布をしっかり者のフィアに委ね、ボクは城に向かった。
城に入ると、すぐに脇から現れた人物に手をとられ、部屋に引きずり込まれた。
「王女に会う前に……」
ボクを椅子にすわらせると、彼女はボクに跨ってきた。エドリーだ。ボクより年上だけれど、王女を守る親衛隊、影武者という立場から処女を貫いてきた。でも、ボクたちと一時期暮らす間に経験し、一度その味を知ってしまったので、我慢ができなくなったのだ。
成人男子の頭ぐらいはありそうな大きな胸を、すぐに服をめくってボクに押しつけてきた。ボクも赤子のようにそれを口に含みつつ、彼女とともに服を外す。
この後、ナナリー王女と会うが、その前に済ませておこうというのだ。
エドリーはすべて脱がず、すぐにボクのそれを掴んで、自分で導く。彼女のそこは期待と、待ち焦がれていたためか、すんなりと入るほどに温かく濡れていた。
椅子に浅く腰掛けたボクの上で、エドリーが弾むように動く。すると、弾むのは二つの膨らみもそうであり、下からそっと手を添える。例え骨折している左手といえども、この手は外せない。頭脳線と感情線の間を行ったり来たり、ボクの理性と欲情を交互に刺激してくるその突起は、痛みや痺れなんて忘れさせる。
エドリーは「あぁ……」と、歓喜の声をあげる。町にもどってから、久方ぶりの刺激をいとおしむように、激しく動いたり、緩めたり、彼女は存分に楽しむつもりのようだ。
上下、左右、縦横、まるで自分の中にボクのそれを擦りつけ、その感触を刻み付けて、少しでも一人のときに思いだせるように、しっかりと味わうつもりだ。
ボクも脳裏と、感触にその弾力と、彼女の温かみをしっかりとその手と、股間に刻みつけて帰るつもりだった。
ボクたちは短く、限られた時間だけに、それを少しでも大切にしようと、激しくも繊細な時間を過ごすのだった。
~~ オシャレ ~~
ちょっと頬を上気させているけれど、さっきまであれだけ激しく悶えていたエドリーが、ナナリーの隣に立つと凛としているから不思議だ。今は二人とも服をきて、ナナリーの居室に来ていた。
「サン・バルラでは活躍したんだって?」
「どこから?」
冒険者としてのボクの活動は、ナナリー第三王女は知らないはずである。
「ムルフス夫人を倒せる冒険者など、キミしかいないだろう」
ナナリー王女はそういって笑う。
「あそこは常に問題視されていた町だ。バルラ教はまだ小さな勢力だが、拡大されると国としても厄介だからね」
「バルラ教を壊滅させたわけではないですよ」
「同じさ。ムルフス夫人の戦闘力は絶大だ。その結果、国の統制、貴族を送りこんでいたことが逆に裏目となって、そこがお墨付きのようになり、統制が利かなくなっていたんだよ。君が彼女を倒してくれたおかげで、これからは国もあの町への関与をやり易くなるだろう」
ギルドは国と裏で結びついている……と考えているけれど、ボクを騙してまでぶつけたかったのは、国としてもそういう事情があったからかもしれない。
ナナリー王女とは表敬訪問だけで、町にもどってきた。すぐにフィアたちは見つかったけれど、四人で楽しく買い食いをしているところだった。
「これ、うちでも作りたいのん!」
ブドウのようだけれど、小さな実はブルーベリーという果物に、より近いのかもしれない。それを潰してジャムにしたものが、パンケーキのような生地に塗られたお菓子だ。
「タネか、苗を入手できれば育てられるんじゃないか? 山の上の方が、果物はおいしくできるはずだよ」
これまでは野菜を育てるなど、すぐに食べられるものを優先してきたけれど、これからは少し、果物といった甘味のとれるものを育ててみるのもいいのかもしれない……、などと考えていた。
デザートで、これだけ皆が喜んでいるのだから……。
「見て、見てぇ」
ミズクはくるりと一回転してみせる。
「可愛らしい服だね。」
このところ、実入りのいい仕事が多かったことで、ちょっと懐具合にも余裕があった。動物たちの薬を買っても、ちょっとした贅沢をできるぐらいにはなっていた。
「私もよかったのかな……」
ザビも、いつもの動き易い和装ではなく、晴れ着のようなものを着ている。ルゥナは薄い萌黄色を中心としたドレスで、フィアはふわっとした柔らかい上に、ぴたっとしたパンツを合わせている。
「みんな、オシャレな服を選んだね」
「今日は、これからデートですから」
そう、久しぶりの町へのお出かけなので、今日はみんなと順番にデートをすることになっていた。
4人で……ではなく、1人ずつとするので、それぞれがオシャレな服を選び、デートプランも自ら考えている。
ボクも愉しみだ。みんなとの、初めてのデートだから。
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