勇者「くらえ!抗生物質!!」スライム「ピギャアーー……」

青羽真

召喚された

※本作を読む前に※

 本作品は、微生物学を学んだばかりの作者が、自分の勉強の為に書いた作品です。

 しっかり調べながら書いているつもりですが、間違いがあるかもしれません。ですので、ここに載っている情報を鵜呑みにしないで頂けると助かります。もし、間違った情報を見つけましたら、指摘いただけると凄く助かります。よろしくお願い致します。

 また、異世界ファンタジーにしている以上、現実世界の医療とはずれた描写が含まれています。あくまで、異世界ファンタジーとしてお楽しみください。


 それでは、本編どうぞ!


******************************


「終わったあ! 今日から春休みだぜ!!」


 俺の名前は賢人けんと。大学二年生だ。

 今日は、二年生最後の試験だった。万が一、成績が振るわなかったら、追試という地獄が待っているのだが、ありがたいことに山が的中した。今回のテストも無事、乗り越えたと思っていいだろう。


「試験対策から解放された訳だし、帰ってゲームでもするか!」


 解放された喜びを胸に、帰宅していた時だった。不意に、地面が赤く光ったのが目に入った。


「な、なんだ?! 魔方陣!! うわあーー!?」


 赤く光る幾何学模様が強い光を発し、それと同時に俺は意識を失った。



「おお! 勇者の召喚に成功したぞ! これで世界は救われる!!」


「「「うおおおーーーー!」」」


 大きな叫び声が聞こえ、俺の意識は覚醒した。

 周囲を見渡すと、王様っぽい格好をした白髭のおっちゃんと、その娘と思しき綺麗な女の子。そして、総勢五百人程の黒いローブを着た怪しげな人物に俺は囲まれていた。


「うんん? ここはいったい……?」


「おお、お目を覚まされたか、勇者殿」


「勇者?」


「まずは、こちらの都合で貴殿の時間を使わせてしまった事を深くお詫びさせて頂きたい。だが、我々も背に腹は代えられない状態なのだ」


「はあ……」



 詳しく話を聞いた結果、どうやら俺は異世界に召喚されたという事が分かった。

 この世界では人類は『スライム』という強力な魔物におびえながら暮らしているらしい。ゲームでは最弱とされるスライムだが、この世界の『スライム』は普通の兵士100人を犠牲にして、やっと一匹倒せるか否かというレベルで強いようだ。

 そこで必要なのが『勇者』である。『勇者』はSSSランクの魔法『召喚魔法』で召喚する事が出来る人物だそうだ。召喚に使った膨大な魔力を受け取った勇者は『スキル』を発現させる。スキルは戦闘系・支援系・生産系と様々であるが、いずれもスライムの討伐に役立つらしい。

 もっとも、勇者召喚は伝説的な存在で、実際に召喚されたという確かな記録は残っていないそうだ。今回、俺の召喚に成功したのは奇跡だったそうだ。

 つまりは、王様、そしてこの世界に生きるすべての人類は俺にスライム討伐をしてほしいようだ。



「ちなみに、帰ることは出来るのか?」


「勇者殿のスキルに『帰還』という物がある。それを使えば、いつでも変える事が出来るぞ」


「なるほどな……。それを教えて良かったのか? 俺が何もせずに帰ると言い出すかもしれないぞ?」


「それならそれで構わない。勇者殿がこの世界を見捨てるなら、それが運命だと受け入れるつもりだ。だが、もし人類を救って頂けたなら、それ相応の報酬を用意する所存だ。なんでも申してみろ。国一番の美女でも、両手で持ち上げれないほどの金塊でも。もちろん、元の世界に持ち帰る事も出来るぞ」


「そ、そっか……。取り敢えず、自分に本当にスキルが芽生えているのか確かめたいのだが……」


「それなら、『ステータス』と唱えると良いぞ」


 なんつーか、定番だな。まあ、唱えてみるか。


「『ステータス』うわ!!」


Name:ケント

Age:0

Skill

・意思疎通

 対面している人が発した音声の意図を理解する事が出来る。逆に、自分の言葉も相手に理解させることが出来る。常時発動。

・帰還

 両目を瞑り『リターン・トゥー・メイン・ワールド』と唱えると、元の世界に帰還できる。

・鑑定

 右目を瞑り、左目だけで対象を見つめながら『エグザミン』と唱えると、見つめていた対象に関する情報を得る事が出来る。

・抗粘物質魔法(Lv.0)

 粘性生命体にとって有毒な霧を生成、噴射出来る。ただし、人にも悪影響を及ぼす場合がある。

 現在使用可能な呪文

 ・ベンジルペニシリン

 

「どうだった? 無事、スキルを獲得しておったかね?」


「ああ、確かに確認出来た。出来たのだが……」


「どうかしたか?」


「いや、本当にスキルが使えるか分からないというか……」


「どういったスキルなんだ?」


「スライムに取って有毒な霧を生み出すようだ」


「「「な、なんと!!」」」

「凄いではないか!」


「あ、ああ。それで、スライムってのに会ってみたいのだが、どうすればいいのだろうか?」


 いざとなれば、この世界を捨てて逃げる事も出来るしな。その前に試し撃ちをしてみたい。


「結界の外に行けばすぐにでも見つかる。サラ! 勇者殿の案内を」

「かしこまりました」


 サラという人物が俺の前に跪く。綺麗なブロンドヘアの女性だ。


「勇者殿、僭越ながら、私が案内を務めさせて頂きます。」


「お、おう。よろしく頼む」



「この辺りは『結界』の効果があるので、強いスライムはいないです。万が一の際は逃走も可能でしょう。安心してスキルを試してみてください」


「なるほど。ところで、『結界』って?」


「SSランクの魔法『守護』で作ることが出来る、不可視の膜です。50人ほどの術者が、一年分の魔力を使って、構築する事が出来ます。現状、私達が出来る、最大の抵抗ですね」


「なるほど。それを張り続ければいいのでは?」


「術者50人は暫く介護なしで生きていけない体になってしまいます。そこまでの犠牲を出しても、張った結界は二週間ほどで消えてしまいます」


「なるほど。本当に『生きながらえている』って感じなんだな……」


「はい……。そろそろ辺境の土地ですね」


「え? まだ馬車で一日も走ってないじゃん!」


「?」


 俺はてっきり、一週間、下手したら一か月ほどの移動を強いられるのかと思った。それが、まさかの一日。いや、6時間ほどで辺境についてしまったのだ。


「ねえ。この世界の人口って何人くらい?」


「えっと……。税務省の友人曰く、最近500万人前後だそうです」


「Oh……」


 人が居住できるのは結界に守られたごく狭い範囲。改めてその事を思い知った。



「それにしても、この辺りは畑ばかりだな?」


「はい。スライムが侵入する恐れがある所で寝る訳にはいかないでしょう?」


「なるほど。じゃあ、スライムの被害は最小限に抑えられて……」


 いるのか。そう言おうとした時……



「きゃあああああああーーーー!!!!」


 悲鳴が聞こえた。



 咄嗟に俺が、引き続いてサラが声の方へ走る。


 あぜ道で腰を抜かしている少女が目に入った。その子の視線の先には、直径一メートルほどの紫色の球体が数珠つなぎになって蛇のように首をもたげていた


「あれがスライム……?」


「ええ。紫色のスライムは、動くのが遅く、走れば逃げる事が出来ますが……」


「あの女性、腰を抜かしちゃってるね……」


「ええ。まずい! 胞子を吐こうとしています!!」


「な!! ええい、賭けだ!! 『ベンジルペニシリン』!!」


 スライムが胞子(?)を吐く前に、俺は魔法を発動させた。体から何かが出ていく感覚と思に、白い煙が一帯を覆った。次の瞬間……


「ピギャアーー……」


 スライムは苦しそうに暴れ出し……


 ――バフン!!!!


 爆発四散した。



<Ageが上がった! 0→1>

<抗粘物質魔法のレベルが上がった! 0→1>



Name:ケント

Age:1

Skill

・意思疎通

・帰還

・鑑定

・抗粘物質魔法(Lv.1)

 現在使用可能な呪文

 ・ベンジルペニシリン




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