第2話 えっ?俺って死んでるの?

【あの、多田野尊さんですよね?】


「そうですがあなたは誰ですか?」


【私は、女神のセイと申します。あなたを審判所に来て頂く予定がこちらへ転送してしまいました。テヘッ】


「テヘッじゃねーよ。この駄女神がぁ。早いとこ俺を元の世界に戻せ。」

イラッとした俺は怒りに任せて怒鳴ってしまった。そうすると後ろで、泣く声が聞こえてきた。


『やっと、婿が来てくれたと思っていたのにこの仕打ちとはセイ様はわらわに恨みでもあるのかえ?』

と言いながらわんわん泣き出した。


【多田野さん、女の子を泣かす様な事をして恥ずかしいとは思わないんですか?】


「てめぇだけには言われたくねえよ。まともに仕事もできねえ駄女神にはな。悪いがあんたじゃ話になんねえよ。あんたの上司を呼んでくれ!」


【た、多田野さん、そ、それだけは勘弁してもらえませんか?私、次しくじると下界落ちになるんです。】


「そんな事は知ったこっちゃねえよ。俺にはまだやりかけの仕事があるし、向こうには俺の帰りを待っている人もいるんだよ。てめえの失敗の尻拭いや獣の婿になんてなれる訳がねえだろうが、早く上司を呼びやがれ。」


そういうと今度は駄女神まで泣き出しやがった。


≪誰ぞ、ワシを呼んだか?ん、その方はセイではないか?何かあったのか?≫


そう言って現れたのは、白い着物を纏った白い長い髭を蓄えたおじいさんだった。


「あんたがこの駄女神の上司なのか?」


俺がそう言うとじいさんは、髭を撫でながら駄女神を睨みつけながら答えた。


≪いかにもワシの下の者だが何かあったのかな?≫


その言葉を聞いた途端、俺は堰を切った様に叫んだ。


「何かあったじゃねぇよ。この駄女神がいきなりこんな所へ俺を転送しやがってこの獣の婿になれとほざきやがったんだよ。まだ仕事ややりかけの事がたんまりと残っているのにも拘らずな。どういう事か、上の者から俺に対してわかりやすく説明願えませんかねぇ?」


じいさんは、駄女神を睨みつつ答えた。


≪これは申し訳ないことをした。直ぐに元の世界へ戻させるので許してはもらえまいか?あと、貴殿に対して申し訳ないのだが、元の世界でのやりかけの事が終わったらでいいのでこの世界に戻り、その神獣フェートリルと夫婦になってはくれまいか?

元の世界に嫁や共になる者がいなければということになるが・・・≫


「何でそうなるんだよ。確かに一緒になる人はいないが、獣を嫁にしなけりゃならないんだよ。これから向こうで出会いがあるかもしれないだろ?」


≪すまぬ。向こうで貴殿は、死ぬ運命にあった。その魂を呼び寄せてそこのバカ娘が貴殿に説明の上、婿になってもらう予定だったのだ。本当ならば貴殿はすでに死んでいるのだが、時を巻き戻しやりかけの事をしてもらってこちらに来てもらうようにならワシも大目に見る事もできるのじゃが、そうでなければ貴殿の魂は異界を彷徨い脱出する事さえ出来なくなってしまうのじゃよ。何とか聞き入れてはもらえんかの?≫


そう言われ俺は愕然とした。頭の中で俺は死んだのかと思うと泣きそうになってしまった。


「俺は、向こうでは死んでいるのか?どうなって死んだんだ?俺の記憶の中には車で走っている最中に光に包まれたかと思ったらここにいたんだが・・・」


≪無理もあるまい。なら説明しよう。貴殿は、確かに自動車を運転しておったが、居眠り運転の大型運搬車に信号無視で突っ込まれて即死したんじゃよ。そこのバカ娘が

その姿があまりにも無惨じゃったので、本当なら転生の間へ召喚するところ、貴殿に最後の姿を見せる事なく間違えてここへ転送したんじゃよ。≫


愕然とした俺は、しばし時を忘れて呆けてしまったが、気を取り直して確認した。


「今の説明で一応今までの経緯はわかったが、なぜ俺がこの獣と一緒にならないと

いけないんだ?それが一番の疑問なんだがな?」




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