ヤギは食べ物
@haman7
第1話 ヤギがくる
実家は大家族だった。じいちゃんばあちゃん、父、母、そして兄弟たち。
自然豊かな山野での生活は毎日が発見の連続で、飽きることがなかった。
まあ、貧乏農家で生活は大変だったけど。
家はとにかくボロくて台所は土間になっていて、薪なんかで炊く竈が普通にあった。小学生時代までは米は竈で炊いていたように思う。普通に現役で竈が使われていたんだから今考えればすごい話だ。
言っておくが大正とか戦後の話ではない。昭和ももう終わろうという頃だ。
家の周りには田んぼや畑がたくさんあって、主に米とジャガイモと大豆を作っていた。果樹園もあった。ミカンや梨なんかを作っていた。お茶の樹もあったな。
昼ご飯時になると、親がいないときでも包丁を持ってキャベツやホウレン草なんかを収穫してきて野菜炒めを作ってよく食べていた。
ばあちゃんは昔スイス人の家で家政婦をしていたそうで、いろいろな西洋料理を作れた。味噌も豆腐も、お茶も自分で作れたから、長いことそれらを店で買ったことがなかった。貧乏だけど、食うには困らない生活だった。
じいちゃんは身長が高く若い頃はさぞかしモテたろうなと思うくらいかっこよかったが、酒飲みで、よく酔っぱらっていた。
私はじいちゃんは怖かったのであまり近寄らなかった。じいちゃんも孫の私は好きじゃなかったのかもしれない。
そんなじいちゃんの食べさせてくれた料理で忘れられないものがある。
ヤギ鍋だ。
メエと鳴くあのヤギの鍋だ。
師走が近づくと、じいちゃんはヤギを連れてきた。
今年は安かったと自慢げに話していたから多分買ってきていたんだろう。
売った人もこのじいさんが食べるために買うとは、もしかしたら思わなかったかもしれない。
ヤギはそこらへんに離されて、草をむしゃむしゃ食べた。
私らはメイとかに適当に名前をつけて可愛がった記憶がある。
学校帰りに草をつんできて食べさせたりしたな。
紙を食うかも試した。食うのは食ったが、ぺっと出したので、美味しくはなかったんだろう。
ヤギは小さかったが、日ごとに大きくなっていった。
毎日毎日、草をはみ、のんびりとした生活をおくるヤギのメイがずっとこのままいたらいいなあと思ったものだ。
白いヤギはおとなしくて、とにかく人によくなれていた。かわいかった。
しかし、その日はいきなりきた。
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