真夜中のトイレットペーパー

@kojikista88

第1話 天啓

(数日内にトイレットペーパーが店頭から消えるだろう。ヨウ、今のうちに買えるだけ買っておくのだ)


ガバッ!!


陽は勢いよく身体を起こした。


「う〜ん…どうしたの?」


隣で寝ている聖が迷惑そうに言った。


「大変だ、聖っ!!


オレの守護神・ンバッハブビーン様からメッセージが下りた。数日内にトイレットペーパーがなくなるらしい。オレ、今から買いに行ってくる!」


「え?外、真っ暗だよ?」


陽はスマホを見た。深夜2:30。


「この時間…ドラッグストアはやっていないな。


仕方ない、割高だけどコンビニに行くか」


「ひーちゃんは寝ます、おやすみなさい」


陽は近隣のコンビニを周り、トイレットペーパーを買いあさった。両手に3袋ずつ、口に1袋。1回に運べるトイレットペーパーは7袋。1袋12ロール入りなので84ロールだった。


買っては家に戻り、再び買い出しに向かう。しかし、いくら買い増ししても陽の不安は埋まらなかった。


やがて東の空が明るくなってきた。


「ふぅ、もう朝か…」


何回目の買い出しだろう?陽はトイレットペーパーを置き、玄関の扉を開けようとした。その時だった。


ガチャリ


音のした方を見ると隣の部屋の住人と目があった。確か名前は文春(ふみはる)。最近、諏訪から引っ越してきたらしい。


「あ、おはようございます…」


陽は慌てて挨拶をした。文春は薄気味悪い笑顔を浮かべるとトイレットペーパーを数え始めた。


「おはようございます、浅間さん


いち、にい、さん…


随分な量のトイレットペーパーですね。


確か浅間さんは可愛らしい彼女さんとお二人暮らしでしたよね?


そんなに必要なんですか?


イーヒーヒヒヒヒッ…」


陽は少しムッとして言った。


「あ、あなたには関係ないでしょ!」


陽はそういうとトイレットペーパーを部屋の中に入れ、ドアに鍵をかけた。


「ヨウ、おかえり〜


今、朝ごはんの準備してるからね〜〜」


部屋に入ると目を覚ました聖が朝食の準備をしていた。陽は聖の顔を見ると急に不安な気持ちになった。


「聖、隣の部屋の文春には気をつけろよ。


戸締り、しっかり頼むぞ」

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