見掛け倒しロマンス
@r_417
見掛け倒しロマンス
***
思わず振り返るような麗しさ。
凡人ではおおよそ太刀打ち出来ない頭のキレ。
更に性格は非の打ち所がない。
俺の親友・佐藤ミツルは王子様と称され、一目置かれている。
だけど、そんな王子様もやはり人間。
ウィークポイントは必ずあったりする。
ミツル王子様のウィークポイント。
それは……王子様の幼馴染である美少女・坂下みゆ。
ミツル王子様と並んで遜色ないスペックを兼ね備えた坂下もまた王子様とともに皆の憧れのまなざしの的となっている。王子様と称されるミツルに唯一釣り合う女としても名高く、坂下の地位は盤石と言って過言ではないだろう。
さて、幼い頃から気心知れた間柄。
且つ、同じくハイスペックな二人が恋に落ちる。
……という展開なら、よくある恋の序章。
しかし、そんな簡単に恋が展開しないことこそ、ミツル王子様の目下の悩み事なのである。
***
「ミツル、今日も愛してる」
「……ありがとう、みゆ。僕もみゆを愛してるよ」
坂下は人目を憚ることなく気持ちをストレートに表現する。
それは隣にミツルの親友がいようとも、だ。
そして、その坂下の気持ちを無下にするような行為をすることが出来ないミツルは今日も坂下と同等の言葉を投げかける。
誰もが羨む美男美女の相思相愛な様子は、出会した人たちの心までときめかせる。現に、今日もまた通りすがりの女生徒たちの腰が砕けている。
傍目からはまさに順風満帆。
だが、その実態は……。
***
「はあ……。みゆ、絶対に分かってない」
「だろうな」
ミツルの愛と、坂下の愛の温度差は凄まじい。
ハイスペック美少女に抱くミツルの『恋愛』とは異なり、幼い頃から家族ぐるみで付き合っている坂下の抱いている愛は『家族愛』と言っても過言ではないだろう。
両者が持つ『愛』の温度差に気付くも手放したくないミツルと、温度差を敢えて強調し続ける坂下。二人の攻防戦が繰り広げられている実態を把握している人はとても少数だろう。
どんなにハイスペックであろうとも、まだまだ未熟な子どもが完璧なロマンスを演出できるわけもない。ハイスペック幼馴染の見掛け倒しロマンス。その実態を知らぬが幸せか、知るが幸せか……。
【Fin.】
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます