第42話

「最後に世界レベルについてね。まあこれに関してはあなたの目で直接確認してちょうだい。あんまり言うとネタバレになっちゃうし、あなたもそういう「はじめて」を楽しみしてるんでしょ?」


 画面の中の少女が大助へと問いかける。何故だがジッと視線を向けられているような感覚を大助は味わっていた。その段階で大助の脳裏に嫌な予感が走る。


「……え?これってまさか…」


「そうそうそれ!その動揺した顔が見たかったのよ!いつもの録画だと思って油断した!?ぶっぶー!残念ながらこれは録画ではなく生放送なのよ!いえーい見てるぅぅぅ!?」


 ダブルピースを決めながらクルクルと少女が踊り始める。一通り踊り終えた後、何事もなかったかのように席に座り直した。


「ふふ。あなたの珍しい顔が見れてついテンションが上がってしまったわ。いつものムスッとした顔も悪くないけれど、そっちの顔の方が似合ってるわよ」


 ビシッと伸ばされたその白い指先が、大助へと向けられる。


「……だからさっさと確認に行きなさいな。また会える事を楽しみしてるわよ。金本大助」


 チュートリアルが終了し、スマートフォンの画面が元に戻った。


「いや、普通にビックリしたぜ」


(とんでもないサプライズを仕掛けてきやがってよ。まあ面白かったからいいけど)


 気持ちを切り替え、更新された機能の確認を始める大助。解説人が言っていた通り、画面の中の世界は激変していた。


「…ああ。確かに世界が広くなってるな」


 孤独の栽培人の中の世界は、空もあるし地面もある。だが、ある一定の場所まで進むと半透明の壁に阻まれて進めない。その事を大助はお助けモンスター達から聞いていた。そして今、その半透明な壁は大きく広がっていた。


(メニュー画面にも???とかいう項目が増えてるな。あいつらに頼んでその辺の調査をして貰うか)


 大助がお助けモンスター達にメッセージを送信する。


<壁の向こう側を調査してくれ>


「うっし。まあこんな感じか」


 考え疲れた大助がソファーへともたれかかる。


「結局、このアプリて何なんだろうな?」


 誰が何の目的で作ったのか。そして何故自身のスマートフォンに送信されてきたのか。考えてみれば分からない事だらけだ。


「どうでもいいや、そんな事」


 その考えの全てを、大助は放棄する。


「今が楽しければそれでいい。それこそが俺の人生だ」


 答えが出ない問題に時間を使う必要はない。人生は常に選択肢の連続だ。だからこそ、大助は自身が一番楽しめると確信した道を突き進む。


「さてと、それじゃあ早速新しい草を確認してみるか」


 開き直った大助がいつものように新種の草の確認を始めた。大助の栽培画面には次の3つの草が表示されていた。


・転移草


・自爆草


・雷草


「…いやいやいや。ちょっと待て。 2番目ヤバ過ぎだろ」


 あまりにも不穏な名称に大助が少しだけ動揺する。この草を育てて本当に大丈夫なのだろうか?そんな当然で当たり前の疑問が湧きあがる。

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