第10話
「ダメだ。やっぱ実物保管はリスクが高過ぎる。なんかこう、収納機能とかないのか?」
スマホの画面にポーションを近づけてみた。…何の反応もない。
「…ダメか。なら倉庫画面でどうだ……おお!?」
倉庫画面を開いた状態でポーションを近づけてみると、ポーションが突然消えた。
「おっし!これはいけたんじゃねえか!?」
倉庫の在庫に低級ポーション(1)という表示が増えた。収納成功だ。
(何度か試してはっきりしたな。現実側の物は倉庫には収納できないが、ショップを経由して入手した物は出し入れできる)
「制限付きのアイテムボックスって感じか。色々と使い道はありそうだが…」
大助が色々と悪い事を考えていると、ふと、放置モードの現状が気になった。
「あのウサギちゃんがしっかりと働いてるといいんだが」
大助が久々に放置モードを起動する。
「げっ!?」
目に入った光景に大助は絶句していた。
___畑に転がる数多くの死体。そこには地獄の光景が広がっていた。
「まさか…」
大助はファンタジーな出来事の数々で失念していたのだ。このゲームに対人要素はないのだと。よくよく思い返せばヒントは隠されていたのだ。ショップで販売されていた武器の数々。そしてポーションの存在。これらは全て対人を想定した品物だったということだ。
山賊のような者たちの死体が転がるなか、まだ息をするものが居た。そう、モブ・ラビットだ。彼女は驚くべきことに初期装備で全ての敵を葬っていた。だがその代償は大きい。血塗れで横たわり浅い呼吸を繰り返す。今の彼女にできる事は死を待つだけだ。
(まだ生きてるな…)
大助は迷わずモブ・ラビットにポーションを使用する。
「死ぬな。まだまだお前には働いてもらわないと困る」
ポーションをかけられたモブ・ラビットの傷がみるみると回復していく。立ち上がれるようになったモブ・ラビットが急いでスマホらしき端末を操作した。そしてピコッ!という音と共に大助のスマホにメッセージが届く。
<ますたーたすけてくれてありがとうございます>
(俺だけじゃなくて向こうからも送れるのか)
<気にするな。必要経費だ>
<かんしゃします>
モブ・ラビットがブンブンと頭が外れそうな勢いで頭を下げ続ける。
(律儀なやつだな。ここは何かプレゼントでもしてモチベを上げとくか)
<何か欲しいものはあるか?何でもは無理だができるだけ要望には応えるぞ>
可愛らしい耳がピコピコと折れては立ち上がる。これは彼女が悩んでいるときの癖のようなものだ。そして突然顔を真っ赤にさせたかと思うと、手早く文字を入力していく。
<なまえがほしいです>
「…ふふ」
無邪気な答えに思わず大助の口から笑みがこぼれる。
「名前か…」
適当に思いついた名前をメッセージに入力する大助。
<お前の名前は「ラビ」だ。よろしくな>
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