変容 残り4日
「で、菫ちゃんと朔真は出会って3日で付き合い始めたらしいよ」
私が言うと、
「まあ、そういうのは、色んな形があるから」
向かいに座っている咲凛花は冷静に返した。
時刻は一時を回ってすぐだった。
給食を食べてすぐ私達は図書室を訪れ、
人の少ないテーブルを選び向かい合っていた。
図書室の中には、ちらほらと人がいた。
「朔真はいきなり女の子に襲い掛かる
匂いフェチのド変態だけど、
菫ちゃんはすごい子だよね。
一目惚れだったんだって」
「私からしてみれば、二人ともすごいよ。
怖くはないのかな」
「まあ、朔真は我を失う、みたいな感じだから
意識ないかも知れないけど」
咲凛花は小さく笑い、
じっとこちらを見つめてきた。
「とにかく、朔真君は変態なんだね。分かった」
時計を一瞥し、聞いてきた。
「ところで、何の用で私を連れてきたの?」
「それはね」
私は周りに聞こえないよう、
小さい声で話し始めた。
「昨日の放課後、私咲凛花ちゃんが何してたか、
というか、何されてたのか、見たんだ」
咲凛花の表情が一転し、
私を警戒するようなものに変わった。
「気付いてたよ。
そっちの音も、聞こえてきてたから」
「それでね、私から提案があるんだ」
「提案」
彼女は訝しげに復唱した。
「うん。明日も、あの先生にされるんでしょ?」
「多分」
「良かった。じゃあ、咲凛花ちゃんの
代わりに私がトイレの個室の中に入って、
先生とやってもいい?」
数秒の間の後、咲凛花は
信じられないものを見るような目で私を見た。
感情の篭っていない声で、彼女は警告をした。
「一応、言っとくけど。
ゴムだってしてくれないし汚されるし、
それに、すごく、痛いと思うよ。
あんなに乱暴にされたら」
「そうなのかな?」
「もし、そういうことに興味があるだけなら、
クラスの男の子とか、誘った方が良いよ。
四葉ちゃん、可愛いんだから」
「うーん、エッチしたいだけなら
それで良いのかもしれないけど、
私は先生としてみたいんだよね。
というか、先生だからしたいというか」
呆れた様に咲凛花は言い捨てた。
「じゃあ、止めないけど」
「ありがとう!」
言うと、
彼女は目を見開き怖がっている様子だった。
「一応説明しとくけど、
放課後、女子トイレの真ん中の個室に入っててね。
いつも五時位に、来るから」
「了解」
「その、明後日、感想聞かせてね」
「エッチの感想聞きたいの?
咲凛花ちゃんも、朔真と変わらないじゃん」
「そうじゃなくて」
彼女は湿ったような、
粘っこくまとわりつくような声で言ってきた。
「心配だから」
「大丈夫だって、多分」
「四葉ちゃんは、他の人とは
違う様な感じがするんだよ」
同情するように、彼女は言った。
「四葉ちゃんも息吹みたいに、
恐怖に立ち向かえる
特別な人なのかもしれないけど、
私にはそうは見えない。
恐怖を、知らないだけのように見える」
脳内で咲凛花の言葉を噛んでも、
一向に何の情報も得られず私は首を傾げた。
「何、言ってるの?」
「分からないなら、いいよ」
清々しい顔をして彼女は笑った。
「怖いって気持ちに駆られていない人間が、
異常に見えるのは、本来おかしいもんね」
「そう、だね?」
意味もわからず話を合わせた。
「四葉ちゃん」
咲凛花は私の名前を呼び、
手を差し出し、笑いかけてきた。
「明後日も元気だったら、私と友達になろうよ」
「いいけど、
この会話の中で好感度上がるようなことあった?」
差し出された手を握り聞くと、
彼女は嬉しそうに言った。
「四葉ちゃんはね、私と似てるなって思ったから」
「へえ、例えば顔が整ってるところとか?」
「髪が綺麗なところとかも、ね」
私達は静かに笑った。
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