ゆっくり解説

這い寄る恐怖ショゴタン

フワーデ「うーん。どうしたらいいのかなぁ。うーん。うーん」


真九郎「フワーデちゃん? そんなに考え込んで、いったいどうしたのですかん?」


フワーデ「あっ、シンクロー! えっとね、いま”フワーデ・チャンネル”の視聴者を増やすためにどうすればいいか考えてるところだよ」


真九郎「そうなのですかん。フワーデちゃんが可愛いから、チャンネルの登録者さんも多かったと思うのですがん……」


フワーデ「ワタシがカワイイのはその通りなんだけど、ヒラノの"ゆきな・チャンネル"には遠く及ばないのよ。それにルカのチャンネルも追い上げてきてるし、油断ならない状況なの」


真九郎「確かに平野艦長のチャンネルは、すごく人気ですよねん。私も登録してますよん」


フワーデ「ちょっとシンクロー、ワタシのチャンネルはちゃんと登録してるの? してるよね?」


真九郎「もちろん登録……あっ……ポチッ。い、いま登録しましたよん!」


フワーデ「ちょっと! シンクローは美少女戦隊フワーデ・フォーのメンバーでしょ! どうして登録してないのよ!」


真九郎「ご、ごめんなさいですん」


フワーデ「まったくもう! シンクローもチャンネル視聴者が増えるアイデアを一緒に考えてよね!」


真九郎「うーん。それなら、今のフワーデちゃん活躍シーン動画とは違った、新しいテイストの動画を投稿して、新しいニーズを掘り起こすっていうのはどうでしょうかん?」


フワーデ「たとえばどんなの?」


真九郎「饅頭キャラの解説動画なんてどうでしょうかん。定番といえば定番ですけど……」


フワーデ「それいいね! ワタシの魅力について色々解説するのイイ!」


真九郎「そ、それもいいですけどねん。も、もう少し視点を変えて、妖異の解説なんてどうでしょうかん?」


フワーデ「妖異の解説? うーん。たとえば?」


真九郎「たとえば、先日フワーデ・フォーが戦った”ショゴタン”なんてどうでしょうかん」


フワーデ「ショゴタン? あの気持ち悪いスライム? 説明してもいいけど、そんなの誰が見たいの?」


真九郎「うーん。見たい人は多いと思いますよん。フワデラの皆さんはもちろん、実際に遭遇する可能性が高いリーコス村やグレイベア村の方、アシハブアの騎士の皆さんとか……」


フワーデ「わかった! それじゃ解説はじめよー!」


真九郎「いきなりですかん!?」


フワーデ「ゆっくりフワーデとゆっくり真九郎の、妖異解説ぅー!」


真九郎「ではフワーデちゃん、解説よろしくですん!」


フワーデ「ショゴタンって言うのは、帝国ではクトゥルフ神話に登場するショゴスと同じ神話生物の亜種だよ」


真九郎「クトゥルフ神話のショゴスって絶対やばいやつですよねん。ショゴタンって、なんだか名前が可愛らしい感じになってますけど……」


映像資料:

https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/16817330666916730137


真九郎「実際に見てみるとグロいですよねん」


フワーデ「そうよ。名前に騙されちゃダメ! この妖異、家ほどある大きなスライムでめちゃくちゃ強いの! トゥル・マルカースという古代都市を一夜で崩壊させたとされる恐ろしいヤツなのよ!」


真九郎「家サイズのスライムって、それだけで怖すぎるのに、都市を壊滅とか……」


フワーデ「シンクローはショゴスは知ってる?」


真九郎「知ってますよん。クトゥルフ神話TRPGでもよく出てくる、あの『テケリリ』って叫ぶ、不定形のやつですよねん」


フワーデ「そうそう。でもこの世界のショゴタンは、ショゴスと同じくその表面には無数の目や牙が浮かび上がっては消えて、とってもキモチワルイよ! あと敵を攻撃するときには、太い触手を伸ばして攻撃してくるの!」


真九郎「触手怖いですん」


フワーデ「触手は、伸びるときに攻撃する位置が決まってて、伸び終わった瞬間にドンッ!って感じで襲いかかってくるよ! 落ち着いて動き回れば十分に避けることはできるよ。落ち着いていればね!」


真九郎「そういえば以前、乗組員やアシハブア騎士の皆さんは、ショゴタンを目にした途端に身体が震え出してましたねん」


フワーデ「そうなの。妖異はその存在を認識するだけで人の精神に負の影響をもたらすわ」


真九郎「私にはそういう影響はないみたいですん」


フワーデ「魔法耐性の高い魔族や亜人は、人間よりも影響が少ないの。鬼人族は元々魔法耐性が強いというのもあるけど、シンクローの場合は異世界転移時に付与されたスキル【超魔法耐性】を持ってるからだね」


真九郎「普通の人がショゴタンと出会って、もし怯えて腰を抜かしてしまえば、まずあの触手の餌食になってしまうでしょうねん」


フワーデ「それがやっかいなのよ。今なら妖異の影響を遮断するフワーデ・フィルタやフワーデ・ゴーグルがあるから平気だけど、それがなければショゴタンとの遭遇はそのまま死を意味するよ」


真九郎「実際、護衛艦フワデラが来るまでは、ショゴタンはただ通り過ぎるのを待つしかない災厄と考えられていたようですねん。このショゴタンを倒す方法はあるのですかん?」


フワーデ「あるにはあるよ。体内のどこかにある卵くらいの大きさの魔核を破壊すれば、泡状になって消えちゃう。ショゴタンの魔核は熱にも弱いから焼いてしまってもいいよ。でもこの異世界の武器や魔法では火力不足かな」


真九郎「フワーデ・フォーの戦闘で、何度かショゴタンを斬ったことがありますけど、見た目と違って意外に表面が固いというか頑丈というか……あの巨体のどこにあるかわからない魔核を剣や槍で壊すのはまず難しいでしょうねん」


フワーデ「あと【幼女化】するとかかな?」


真九郎「それだとシンイチさんしか出来ないですねん」


フワーデ「それ以外の方法となると、護衛艦フワデラの主砲や対戦車誘導弾か【幼女化】で倒すしかないかなぁ。滅びた古代都市トゥル・マルカースの伝説によると、千本の矢を射ても20人の魔術師が火の魔法を放っても倒せなかったって」


真九郎「ルカちゃんがドラゴンに戻ってファイアブレスを放ったらどうでしょうかん?」


フワーデ「ルカなら何度かショゴスを焼いてるよ。でも長い時間かけて何度もブレスを吐かなきゃならないから、とっても大変だったって」


真九郎「表面には沢山の目や牙の生えた口があってグロいし、異常にタフだし、ほんとやっかいな妖異ですねん。こんなのがそこら中にいるとか、この異世界ドラヴィルダっていうのはどうなっているのですかん」


フワーデ「ショゴタンは古代都市を一夜で崩壊させたって伝説から認知度は高いけど、昔はほとんど存在しなかったみたいだよ。いまだってショゴタンを伝説上の怪物と考えている人は多いみたい」


真九郎「そうなのですかん? それにしては私たち結構な頻度で戦ってるような気がするのですん……」


フワーデ「たぶんだけど、ショゴタンが世界のあちこちに現れるようになったのは、悪魔勇者の召喚が影響してるんじゃないかな」


真九郎「また悪魔勇者ですかん。ほんと碌でもない存在なのですねん」


フワーデ「私たちの転移させられたのも悪魔勇者が原因だし、私たちにとっては元の世界に戻るためにも、絶対に倒さなきゃならない悪者なんだよ!」


真九郎「ですんですん! で、悪魔勇者っていったいなんですかん?」


フワーデ「フフ♪ それについてもいつかお話しなきゃだね。それで、今回のショゴタンについての解説はこんなところかな。あっ、いま映している画像にはフワーデ・フィルタを掛けてるから、視聴者さんはじっくり眺めても大丈夫だからね! それじゃ……」


真九郎「また来週ですん!」


フワーデ「また視てね!」


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ド・ラヴィルダ物語集 帝国妖異対策局 @teikokuyouitaisakukyoku

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