負けない為の武器

 真白は瞳から聞いた、光の待ち受ける場所へと歩を進めていた。


 (しっかし韋駄天さん、いつの間にこんなもん作ってたんすかねぇ~?)心の中から黄に言われた真白は腰に付けたホルダー、そこに収納されている二種類の鉄棒に目をやる。


 一方は以前韋駄天にもらった警棒だ。三段階の伸縮が可能で耐久性に優れ、なおかつしなやかな性質の金属で製造されたものである。


 そしてもう一方は、真白の腰を円とみなすと丁度半円程度の長さ、U字型の湾曲わんきょくした鉄棒だった。


 実はこのU字型の武器、とあるギミックが仕掛けられている。直線の警棒と同様、両端の二段階伸縮が可能なのだ。更には、二つの先端部分の内、一方には鋼鉄のワイヤーが仕込まれている。それをもう一方の先端まで引っ張り接続することで、即席の小型ボウガンが出来上がるのだ。


 真白の太腿ふとももには流体金属の入った細長いボトルがベルトで固定されており、その流体金属で形成した矢と弓を使うことで、万が一情力が使えなくなった場合でも遠距離攻撃が可能になる、という訳だ。


 そして、歪曲した鉄棒の中心には穴が開いており、その直径は警棒の先端の直径と同じである。二つの鉄棒を組み合わせることで、敵の無力化を重視する真白の戦法に最も適した武器、刺股さすまたが完成する。真白、黄、赤、青、緑…この二本の鉄棒を駆使することで、それぞれの性格、戦い方に合った武器を扱うことが出来るのだ。


 「わたし達が分情だと知った時から作ってくれていたらしいですよ…そして先日ようやく完成したけど、渡すタイミングがなかった、と…」真白は自分の為に武器を作ってくれた、あどけない少女の顔を思い出してクスッと笑う。


 (試用とかしなくていいのかい?いざって時に壊れでもしたら…)緑が心の中で腰に手を当てて言う。(確かに…今回我々が戦う相手はおそらく、今まで戦ってきた誰よりも強いでしょう…緑さんの言う通り、この武器の強度や使用法をもう少し検討しておく必要があるかも…)青は珍しく緑の意見に同調した。だが真白はニコリと笑い、


 「大丈夫!ああ見えて彼女、結構慎重派なんですよ?…それに…」心の中で皆を見渡し、ゆっくりと言葉を繋ぐ。「たとえ武器が使えなくなっても…わたし達は負けない…勝てるかどうかは分からない…でも…。」


 今まで真白と戦ってきた分情達は、その言葉の真意を理解出来た。真白はこう言っているのだ、「負けを認めるつもりはない」と。


 (…は、ははははは!そうだ、あんたはそういう子だったねぇ!悪い悪い、らしくないことを言っちまったみたいだ!出たとこ勝負、そっちの方が断然盛り上がるってもんさね!)緑が心底楽しそうに笑う。(まぁ、しのごの言ってる時間もねーしな。)(確かに…申し訳ありません、貴方の友人を侮辱してしまったようです。)赤と青も納得の表情を見せる。


 (…安心しなよ。もし武器が壊れたとしてもぼくが何とかしてやるさ…この「憎しみ」の影で、やつをズタズタに引き裂いてやる…!)そんな中、一人復讐で満たされた目をぎらつかせる黒…光がいる場所へ、感情達はもう少しで到着する…

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