演じて笑わせろ。ただそれだけ

迷子の鴉

まぁ短すぎるつまらんお話ですが

こんなところでボー――としてるのもあれでしょ。まぁここはとりあえずあたしのお話の聞き手になってはくれませんかねぇ。

ちょ、ちょいちょいちょいちょい!そんな顔であたしから駆け足で逃げようとしないでくださいよ!やめて―!警察に連絡しないで―!110番通報しないで―!



はぁはぁ…もぉぉどうしてそんなに皆さんあたしのことを不審者扱いするんですかねぇ。あたしはただの噺や。自分の声色と身振り手振りでお話を面白おかしく映しく届かせる職人だってのに……まぁ、あたしはそんな噺やの中でもド素人のぺーぺーな者ですが。


とにかく!あたしは今ここであなたにあたしの話を聞いてほしいんですよ。なぁに金はとりませんよ。こんなあたしのお話を聞いて下さるだけでいいんですよ。というか金をとろうとしたらあたしのメンツが立ちませんよ。こんなド三流の奴に金をもらう資格なんてないんで…

それにこれは手前勝手な話ですが、あんた今死にそうな顔してるよ。

何があったか知らないがそんなひどい隈と血色の悪い男をほっとくわけにはいかんですよ。いい男が台無しだよホント。とりあえずなんかの縁としてあたしの話を流し聞くくらいはしてくれませんかね。



さ!では何から話したらいいもんか。

お!ではこういうのはどうです?「復讐鬼とわがまま姫」というお話ですがね。

実はこのお話はあたしが昔恥知らずにも、とある文芸社に新人賞を取るつもりで送りつけたものだったんですがね。これがまあ思い出すと馬鹿げた作品でしてね。


言葉遣いは素人同然。キャラ設定はライトノベルにありがちなものにした挙句、序幕から締めの終幕に至るまで何の救いもありはしない。新人賞はおろか、佳作にすらならなかったものですよ。

自分に自信を持ちすぎて傲慢になっていたんですよ。そのころのあたしは。

あまりにも傲慢だったもんでたった一つの失敗で何もかも自暴自棄になってしまったんですね。何をやってもぶらりぶらりと長続きしないんもんで煙たがられてました。


では前置きはともかくさっさと話しましょうかね。


これは何の変哲もない日常に飽き飽きして大博打に挑んでズタボロになった馬鹿な男のお話です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

演じて笑わせろ。ただそれだけ 迷子の鴉 @rosu5kuhi18

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ