【KAC20224】一個目 お題「お笑い/コメディ」 細かすぎる婚約破棄

テリヤキサンド

細かすぎる婚約破棄

 一年前のこと、創立記念日パーティにおいて、公爵家の長男が肩を抱いている伯爵家の次女に暴行をしたとして、婚約者である侯爵の娘に婚約破棄を突きつけた。

が、杜撰な証拠あったために見事に返され、突きつけた側が処分されつという事件があった翌年のこと。


 今日はあるイベントの開催記念日となる日。そこには煌びやかな衣装に身を包み、イベントの開催を待つ者たちであふれていた。

そんな中、伯爵家の長女であるミーナはエスコートしてくれるはずの婚約者である伯爵家の長男モーリスが迎えに来なかったことで予定よりも遅く、一人で会場へと足を運んだ。

ある地点まで来ると先に来ているかもしれないモーリスを探し始める。

そんな時である、主役が登場するはずの壇上から声が響く。


 「ミーナ・ネールズ!」


その声に壇上を見上げたミーナは壇上にモーリスがいることに気づいた。

そして、その横には男爵家に引き取られた養子であるアリューがいた。


 「ミーナ・ネールズ、あなたは私がこのアリュー・シトーロ男爵令嬢に恋慕していると知り、嫌がらせをした!

いくらなんでも階段から突き落とすのはやりすぎだ。」


自分が正しいという態度でミーナを追及する。


 「いえ、私は嫌がらせなどはしておりません。」

 「しらばっくれるな!証拠は上がっているんだ!」

 「そうですよ!私が階段から落ちる時にあなたが笑いながら突き落とす姿を見たんです!」

 「あなたの証言だけでしょうか?」

 「そうだ!彼女が嘘をいうはずがない!ならば、真実は一つ。お前が嫉妬で彼女を傷つけた!」

 「でも、謝ってくれれば、許してあげますよ!」

 「やってもないことを謝ることなんてできませんわ。」


二人が怒鳴りながら、いうがミーナは動じずに冷静に返していく。 

 

 「くっ、ここまで言ってもダメというなら、仕方ない!


私、モーリス・エンターズはミーナ・ネールズに婚約破棄をし、最愛であるアリュー・シートロとの婚約を宣言する!」


その宣言をした途端、二人の立っている壇上の床がパカリと開く。


 「「えっ!?」」


いきなりのことで驚くことしかできない二人はその穴へと落ちていく。

普通ならここで皆が動揺するだろうが、皆動じずに感想を言い合う。


 「まあ、凄い演技でしたわね。」

 「そうですね、名前が違っていても去年の婚約破棄とほとんど同じセリフでしたから相当練習したんでしょう。」

 「トップバッターからこのレベルですと、この後も期待してよろしいんでしょうか?」

 「そうですね、今度やる時には私も応募してみようかな。」

 「いいですね、ペアで組んでやってみますか?」


嫌な印象などなく、皆、感心した様子。なぜなら、このパーティは「細かすぎて伝わらないモノマネパーティ」の初回開催だったのだから。


 「まったく、最初にあの方がでてきた時には動揺しましたが、いい方向にもっていけたようでよかったです。」

 「そうですね、あそこまで再現、いえ、バカの所業が同じになるなんて、才能がありますね。」


ミーナ・ネールズの周りにいるのは今回の審査員方々。ミーナは今日この日のためにこのパースがそのままのセリフを喋るとは僥倖であった。


その後、落下した二人は底にあったスライムプールに落下し、粘液まみれになり、文句を言っていたそうだが、親であるエンターズ伯爵に激怒され、ボコボコにされた後、婚約破棄をされ、廃嫡。

同じく、男爵家の養子縁組の解除をされたアリューとともに自虐ネタをする芸人になったそうだ。


そして、ミーナはというと細かすぎて伝わらないモノマネをするための相棒を釣書から探す日々を過ごした。

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